×

ニュース

NPT会議前 気をもむ被爆者 核廃絶訴える機会 失う恐れ

 新型コロナウイルスの感染拡大で外国人の入国規制を強める米国の動向に、4月下旬からある核拡散防止条約(NPT)再検討会議に出席を予定する被爆者たちが気をもんでいる。トランプ米大統領が入国か出国かは明言しないものの、規制強化の検討対象として日本を明言したためだ。被爆者たちはNPT発効50年の節目の会議で、各国代表に核兵器廃絶を直接訴える機会が失われると危惧する。

 日本被団協(東京)は再検討会議の開幕に合わせて4月25日~5月3日、被爆者約30人を含む50人規模の代表団を派遣する。小型核の配備など新たな軍拡競争に歯止めをかけられるかが問われる重要な会議。米ニューヨークの国連本部で原爆展の開催や証言活動に取り組むほか、核兵器廃絶を求めるヒバクシャ国際署名を国連に提出する。

 5年に1度の再検討会議への代表団派遣は4回目。これまでに計約140人を送った。被爆者の高齢化が進む中で「大規模な代表団はおそらく最後になる。何としても現地で訴えたいが、入国制限や航空便の取りやめなどの心配は尽きない」と木戸季市事務局長(80)。旅行会社と頻繁に連絡を取り、準備を進める。

 米国は既に、14日以内に中国とイランに滞在歴のある外国人の入国を禁じている。出国についても米国務省が、韓国とイタリアの一部への渡航中止を勧告。日本の警戒レベルを引き上げており、入国でも規制が始まる可能性が出ている。

 広島県被団協の箕牧(みまき)智之理事長代行(77)も、代表団の一員として渡米を予定するが、地元の県内でも国際署名の街頭活動や会合のキャンセルが相次ぐ。「広島の人間として現地で直接訴える役割がある。だからこそ、体調管理にも気を付けているのだが」と事態の好転を願う。

 影響は被爆地から派遣される若者にも及ぶ。平和首長会議(会長・松井一実広島市長)は広島の高校生8人を派遣する予定。首長会議事務局は「生徒たちには粛々と準備を進めるよう伝えている。今は国際非政府組織(NGO)のネットワークを生かして情報を集めながら、状況の推移を見守るほかない」としている。(明知隼二)

(2020年3月5日朝刊掲載)

年別アーカイブ