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被服支廠「相当数保存を」 自民議連決議 全棟は明記せず

 自民党の「被爆者救済と核兵器廃絶推進議員連盟」は5日、党本部で総会を開き、広島市内最大級の被爆建物「旧陸軍被服支廠(ししょう)」(南区)について「被爆建物としての価値を踏まえ相当数残すべき」と決議した。

 会長の河村建夫元官房長官(山口3区)や事務局長の平口洋氏(広島2区)、畦元将吾氏(比例中国)たち5人が出席した。残すべき棟数を相当数とした理由について、平口氏が「全4棟を残すべきだとの案も考えたが、国が保存費用をどの程度負担できるかの議論を深掘りしていない」と説明し、理解を得た。

 決議文は、保存に要する費用を国が「相応の負担をすべき」と記載。活用策は、原案で「千羽鶴を置く場所」など5項目としていたが、畦元氏の指摘で「子どものための平和教育の施設」を追加した。

 議連は年明けから会合を2回開き、2月22日に現地視察した。近く決議文を加藤勝信厚生労働相(岡山5区)らに提出し、広島県と広島市にも届ける予定という。(河野揚)

【解説】財源確保に知恵を

 旧陸軍被服支廠の歴史的意味に目を向け、保存策を検討してきた自民党議連。5日の決議文は、被爆者団体などが求める全棟保存ではなく「相当数残すべき」と記した。あいまいな表現となったのは、ひとえに財源問題に尽きる。

 耐震化工事には1棟当たり33億円が必要だと、広島県は試算する。現存4棟で計100億円以上。これに対し、文化庁や厚生労働省の補助金で活用できそうなのは、いずれも1件当たり年数千万円程度しか見込めない。議連は「財源を示せない現時点で全棟保存を訴えるのは難しい」と判断したという。

 議連会長の河村建夫元官房長官は総会後、こうも言った。「われわれも4棟を保存したいという思いは強い」。外部資金の活用を含めた財源確保の道筋を引き続き探る構えだという。

 被爆者が減る中、原爆の悲惨さを伝える被爆建物を残す意義は大きくなる。国は地元の議論を見守るだけでなく、主体的に議論に加わり、保存に向けて県や市とともに汗をかき、知恵を絞るべきだ。(河野揚)

(2020年3月6日朝刊掲載)

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