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文化財化 文化庁と協議 被服支廠 広島県方針 可否探る

 広島市内最大級の被爆建物「旧陸軍被服支廠(ししょう)」(南区)を巡り、広島県は5日、文化財となる可能性について今後、文化庁と協議する方針を示した。昨年12月に安全対策の原案として示した「2棟解体、1棟の外観保存」の2020年度着手を先送りして方向性の議論を続ける上で、保存規模や利活用策と密接に関わるためという。文化財指定などの善しあしを検討する。

 国側との交渉経緯に関して問われた県財産管理課の足立太輝課長が、県議会総務委員会で答えた。足立課長は終了後、「文化財指定ありきではない。保存、利活用の方向性と合わせて検討する」と説明した。

 県財産管理課によると、国史跡に指定されれば保存整備費の5割、登録記念物なら設計費の5割の国補助がある。一方で指定には通常、2年以上かかり、その間に老朽化した建物の安全対策が制限される可能性もあるという。

 足立課長は総務委で、20年度一般会計当初予算案に費用を計上した建物の外壁を補強するための調査設計が9月に終わるとの見通しも示した。保存、活用した場合の一般的な維持費は、仮に展示施設とした場合、県立美術館(中区)を参考にすると1棟当たり年3億円以上との試算も紹介した。

 この日は委員10人のうち、質問に立った5人全員が被服支廠を取り上げた。湯崎英彦知事が2月に表明した解体着手の先送りに対して「検討を進める上で、県としてある程度の方向性を示し、被服支廠の周辺住民の意見を聞くべきだ」「この問題に特化した組織を庁内につくり、活発な議論をしてほしい」などの意見が出た。(岡田浩平)

旧陸軍被服支廠(ししょう)
 旧陸軍の軍服や軍靴を製造していた施設。1913年の完成で、爆心地の南東2・7キロにある。13棟あった倉庫のうち4棟がL字形に残り、広島県が1~3号棟、国が4号棟を所有する。県は築100年を超えた建物の劣化が進み、地震による倒壊などで近くの住宅や通行人に危害を及ぼしかねないとして、昨年12月に「2棟解体、1棟の外観保存」とする安全対策の原案を公表。20年度に解体着手する方向だったが、今年2月に先送りした。4号棟は、県の検討を踏まえて国が決める。

(2020年3月6日朝刊掲載)

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