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上下の倉庫 「折鶴館」に 原爆の子の像の千羽鶴引き受け

10万羽展示 「平和へ思いを」

 府中市上下町上下でCDやレコードの専門店を営む野田明子さん(79)が、同町矢多田の民家の倉庫に広島市中区の平和記念公園にある原爆の子の像にささげられた折り鶴を飾っている。「折鶴館」と名付けて平和を祈る場とし、来館を呼び掛けている。

 折鶴館は、木造平屋の約30平方メートル。色とりどりの折り鶴約10万羽が梁(はり)や壁からつり下げられている。広島市から譲り受けた国内外の千羽鶴が飾られ「二度と世界に原爆が落とされませんように」など、ささげられた当時のメッセージや学校名もそのまま添えられている。

 野田さんは、広島市が折り鶴の引き受け先を公募していることを新聞で知り「平和への思いが込められた折り鶴が処分されてしまうのは悲しい」と申し込んだ。12年から毎夏、折り鶴の一部を店先に飾った。3歳の時に父が徴兵され「涙を流した記憶が今も残る」。心の底にあった平和への思いが突き動かした。

 折鶴館の開設は、空き家だった築約60年の夫の実家を4年前に譲り受けたのがきっかけ。農機具を保管していた倉庫を昨夏、改装した。地域で話題になり、花を手向けたり見学したりする人の輪が広がりつつあるという。

 「折り鶴に囲まれた部屋で平和への思いを巡らせてほしい」と野田さん。被爆75年の今夏は地域住民たちが折鶴館に集い、キャンドルをともして平和を願う会を開く。いつでも見学でき、入館無料。野田さん☎0847(62)2001。(野平慧一)

(2020年3月8日朝刊掲載)

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