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回天 VRで再現 福山工高の計算技術研究部 訓練地跡など巡り調査

 福山工業高(福山市野上町)の計算技術研究部の生徒はこのほど、旧日本軍の特攻兵器「回天」の訓練地跡が残る周南市大津島などを巡った。出撃が死に直結すると覚悟しながら訓練を続けた当時の若者の思いのありかを直接感じた。調べた構造や質感とともに、回天のバーチャルリアリティー(VR)での再現に生かす。

 リーダーの神原旭希(あさき)さん(16)と臼井和海さん(16)、高橋慧さん(16)の1年生3人。他の生徒と一緒に漫画の描写や実物写真を参考にしてきたが、「資料だけでは不十分」(神原さん)と判断。「自分の目で質感を確かめ、死ぬことを知りながら待機していた若者の心境に触れたい」と訪問を決めた。

 2月15、16の2日間、光市の元基地などを巡り、実物の回天も見学した。神原さんは「回天の中は想像以上に狭かった。鉄の冷たさと重たさを表現できる色に塗り直す」と、若者が兵器の一部として乗り込んだ実物に接した感覚を話す。

 VRの映像は、回天に乗り込み、出撃を待つ場面を想定。ゴーグルと無線でつながったコントローラーを操作してVR映像を体験する。天井のハッチを開ける操作をすると、眼前に青空が広がり、波音やカモメの鳴き声が聞こえる。ハッチを閉じて懐中電灯で明かりをともす操作で、回天内部が確認できる。配管の位置や太さ、ハンドルまでも忠実な再現に心を配る。

 VR「回天」は春までに完成の予定。同じく制作している原爆投下前後の広島の爆心地のVRとともに、8月5日に広島市中区の広島グリーンアリーナで体験会を開く予定。

 臼井さんは「記念館に残る遺書から、死ぬことが美徳とされた時代背景を感じた。戦争の悲惨さを伝えたい」。高橋さんは「回天という兵器の怖さや切なさを感じてもらえるよう、事実を再現する」と意気込む。(湯浅梨奈)

(2020年3月8日朝刊掲載)

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