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広島大仏 60年ぶり里帰り 中区で10月公開 被爆75年 節目飾る

戦後は原爆ドーム近く…現在奈良の極楽寺

 原爆犠牲者を慰霊するため戦後しばらく原爆ドーム(広島市中区)近くの寺に据えられ、今は奈良県安堵(あんど)町の極楽寺にある「広島大仏」が10月26日、広島国際会議場(同)で特別公開される。1960年ごろに所在不明になって以来、約60年ぶりの「里帰り」。広島の寺院の協力を得て、奈良の有志グループが準備を進めている。(奥田美奈子)

 広島大仏は高さ約4メートルの阿弥陀如来坐像(あみだにょらいざぞう)。特別公開では、広島県西部の真言宗寺院や檀家(だんか)でつくる安芸地区弘法大師奉讃会が開く「お大師さんの心にふれる集い」の会場に持ち込み、広く市民に拝んでもらう。極楽寺と、大仏の由来を知る奈良の住民たちが2015年、「広島大仏保存会」を結成して受け入れ先を探し、奉讃会の快諾を得た。

 奉讃会の窓口である萬年寺(呉市)の新宅正明(しょうみょう)副住職(41)は「広島大仏は被爆後、復興を願う市民の心のよりどころだっただろう」と思いを寄せる。「被爆75年の節目に平和を願うとともに、呉でも甚大な被害があった西日本豪雨災害からの復興へ向け、心を一つにするきっかけにしたい」とする。

 広島大仏は1950年に西蓮寺(中区)に置かれていたが、60年ごろから所在不明となった。寺の大仏について広島ゆかりとだけ伝え聞いていた極楽寺の田中全義(ぜんぎ)住職(34)が文献に載る広島大仏と似ていることに気付き、専門家に確認。2011年にお墨付きを得た。以来、極楽寺では8月6日に平和を祈る式典を開いている。

 田中住職は「広島の皆さんの協力で里帰りが実現することになり、とてもうれしい。一緒に手を合わせ、平和への思いを共有したい」と話す。

 大仏は広島での公開後、極楽寺に戻る。同保存会は運搬費用を約150万円と見込み、寄付を募る準備を進めている。http://hiroshimadaibutsu.com/

(2020年3月30日朝刊掲載)

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