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被爆の女学生車掌 紙芝居に 御調の金野さん・三原の安国さん制作

親友亡くした証言が基

 被爆時に女学生として路面電車の車掌をしていた尾道市御調町の女性の体験を基にした紙芝居を、同町の金野(かのう)省三さん(76)と三原市宮沖の安国忠司さん(76)のコンビが制作している。原爆を題材とした作品は5年ぶりで、被爆者の思いを次世代に残そうと誓う。

 女性は1945年4月、15歳で広島電鉄家政女学校(広島市)に入学した。車掌を務めていた8月6日朝、親友が運転手の電車とすれ違った直後に原爆がさく裂。自身は生き延びたが、3日後に親友の遺体と対面した。

 紙芝居では、一回忌の法要であった不思議な出来事をきっかけに、悲しげな顔をした親友の夢を見なくなったという体験も描く。

 金野さんは、家族に聞かれたくないとの女性の思いをくみ取り、自宅に1人の時に訪ねて聞き取った。女性は「学校でもっと勉強したかった」などと繰り返したという。

 金野さんが文、安国さんは絵を担当。2015年、御調町原爆被害者協議会の手記集を基に紙芝居を作り、地元の学校などで披露した。被爆75年の節目に、子どもにより訴えかける作品を目指した。金野さんは「証言を聞く機会が減る中で、親友を亡くす悔しさを伝えたかった」。安国さんは「戦争の悲惨さを訴えたい」と話している。(森田晃司)

(2020年4月1日朝刊掲載)

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