×

ニュース

旧広島県庁 CGで再現へ 福山工高生 復元映画に協力 被爆前の営み表現

 福山市の福山工業高の生徒が、原爆で消滅した旧広島県庁をコンピューターグラフィックス(CG)で再現する映像づくりに挑んでいる。広島市西区の映像作家田辺雅章さん(75)たちが製作を進める爆心地から半径1キロ圏を復元する記録映画の一部となる。7月にも完成する予定だ。(加納亜弥)

 広島市水主町(現中区加古町)にあった旧県庁の再現に取り組むのは、計算技術部に所属する2、3年生の4人で、顧問の長谷川勝志教諭(47)が指導する。

 原爆投下前に米軍が撮影していた航空写真や文献、ポストカードなど資料80点を収集。それらを基に焼失前の旧県庁と議事堂の立体的なCGを専用ソフトで再現し、約40秒の動画に編集する計画だ。製作前には原爆資料館(中区)を見学した。

 現在は、長谷川教諭が作ったサンプル画像を手本に建物や風景の静止画を作成している。壁や道路の質感、行き交う自動車や人など細部も表現する。資料は乏しいが、部長の伊達朋弥君(17)は「実物に近づけ、人の営みがそこにあったという説得力を持たせたい」と強調する。

 2015年の被爆70年に向け、爆心地から半径1キロを再現した記録映画を製作する「爆心地復元映像製作委員会」の活動を知った長谷川教諭が4月、代表を務める田辺さんに協力を願い出た。

 映画は国連などにも送る方針で「世界に発信する作品に次世代が取り組むのは、とても有意義」と田辺さん。元県庁職員からの情報提供も呼び掛ける予定だ。副部長の大山省智(しょうち)君(17)は「一人一人の命の重みが、見る人にも伝わる作品にしたい」と意気込んでいる。

広島県庁舎
 1871年の廃藩置県に伴い広島城内に設置された。移転や失火を経て78年、広島市水主町(現中区加古町)に新築移転された。広島原爆戦災誌によると庁舎はルネサンス式木造2階建て。南には議事堂が隣接し、周囲には県立病院や警察官教習所などもあった。爆心地から約900メートルと近く、原爆投下により一瞬で倒壊、全焼。被爆時の出勤者数は推定700人程度で、そのほとんどが庁内で犠牲になったとされる。現在の県庁は1956年に建てられた。

(2013年5月16日朝刊掲載)

年別アーカイブ