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原爆症申請急増4.5倍 昨年度広島市 認定条件緩和で期待感

■記者 森田裕美

 広島市が2008年度に受け付けた原爆症認定申請は3369件で、前年度の4.5倍に達したことが8日、市の集計で分かった。認定条件を緩和した新しい審査基準への期待感が要因とみられる。一方で、全国的な申請の急増を背景に、国の審査が滞る状態が続いている。

 市によると、月10-20件だった申請件数は、厚生労働省の基準見直し作業の着手を受けて急増し、2008年1月以降は100件以上となった。がん、白血病、心筋梗塞(こうそく)など5つの疾病にかかった人を積極認定するなどの新基準適用が始まった同4月は、618件を数えた。

 原爆被害対策部は「医師や被爆者団体に勧められ、従来はあきらめていた人たちが申請を始めた」とみる。

 全国各地の原爆症認定集団訴訟で国の敗訴が続く。河村建夫官房長官は「5月の東京高裁判決までの解決」を明言しており、市は今後、積極的に認定する疾病の範囲拡大を念頭に、申請がさらに増えると予想する。

 原爆症認定は市町村が申請窓口となり、厚労省が審査する。2008年度の認定件数は、前年度の23倍に当たる2969件。3割強の951件が広島市分だった。一方で、2007年度以前の受け付けを含む「審査待ち」は、市分だけで約3400件もある。被爆者の高齢化が進む中、審査のスピードアップを求める声が関係者の間で強まっている。

(2009年4月9日朝刊掲載)

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