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日朝結んだ李芸の足跡 通信使テーマの記録映画 来月1日公開

 朝鮮から瀬戸内海を経て日本との外交を担った朝鮮通信使。江戸時代の親善使節としてなじみ深い。始祖として、室町時代に40回以上渡航したのが李芸(イイェ)。その足跡をたどるドキュメンタリー映画「李芸 最初の朝鮮通信使」が6月1日、広島市中区のサロンシネマなどで公開される。(松本大典)

日韓関係悪化 ロケ中断乗り越え  朝鮮半島南東部の蔚山(ウルサン)に生まれた李芸(1373~1445年)。8歳の頃、「倭寇(わこう)」に母親を連れ去られた経験を持ちながら、命懸けの渡航を繰り返して日朝友好に尽くしたとされる。

 映画では、韓国の俳優ユン・テヨンが朝鮮通信使の寄港地を旅する。ドラマ仕立ての映像も交え、倭寇に拉致された667人を連れ戻した李芸の功績や思いをひもとく。小宮悦子がナレーターを務める。

 日韓共同製作で、昨年6~8月に両国でロケ。広島、山口、岡山の約10カ所で撮影を重ねた。江戸時代の朝鮮通信使が「日東第一形勝」とたたえた福山市鞆町の対潮楼、通信使を歓迎した呉市下蒲刈町のおもてなし料理などが登場する。

 撮影には困難もつきまとった。8月10日には、韓国の李明博(イミョンバク)大統領(当時)が、日韓両国が領有権を主張する島根県の竹島(韓国名・独島(トクト))に上陸。関係悪化のあおりで、ロケを中断した時期もあった。

 総合プロデューサーの益田祐美子さん(52)は「日韓関係が微妙な時期だからこそ、李芸の存在を知らしめたい」。当初目標から半年ほどずれ込んだが、公開にこぎ着けた。

 映画に出演した対潮楼の小林立(りつ)さん(48)は「先人の思いを受け継ぎ、一衣帯水の隣国との交流をつないでいくべきだ」。下蒲刈町で撮影に協力した蘭島文化振興財団学芸員の平野綿子さん(26)も「草の根の交流が広がってほしい」と期待を込める。

 公開初日にはユン・テヨンと益田さんがサロンシネマで舞台あいさつする予定。サロンシネマTel082(241)1781。

(2013年5月18日朝刊掲載)

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