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社説・コラム

天風録 『中国が核実験か?』

 核実験場だった砂漠で年がら年中、大掛かりに穴を掘っていた。見るからに怪しい。中国はどうやら威力の小さい核実験をしたのではないか―。米国務省がそんな報告書をまとめた▲事実だとすれば、見過ごせない。包括的核実験禁止条約(CTBT)は未批准の中国だが、当面は実験を一時停止すると世界に約束してきたはずだ。何だかんだ言っても習近平氏は「使える小型核」が欲しいのだろう▲だが、事実だとして米国は批判できるだろうか。使える小型核なんて非常識な発想も、CTBTにそっぽを向くのも、核爆発を伴わないから問題ないと臨界前核実験を繰り返してきたのも、一体どこの国か▲事実かどうか、眉唾ものかも。世界保健機関(WHO)は中国の言いなりだとトランプ氏は、資金拠出を一時停止するとまで言い出した。「コロナ後」の覇権を巡る米中の争いが、今回の報告書からも透けて見える?▲どんなに強力な核兵器を持とうがコロナには勝てないと、米中とも身にしみたはずだ。国民の命を守るというリーダーの真の務めを果たしたいなら、核なき世界を目指す主導権争いこそ必然では。そこまでは無理としても、まずはCTBTの批准を。

(2020年4月17日朝刊掲載)

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