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原画ちりばめ価値問い直す 広島の漫画家西島さん 東京で展覧会

 漫画家西島大介さん(38)=広島市西区=の「すべてがちょっとずつ優しい世界」展が、東京都墨田区のアイココギャラリーで開かれている。原画の価値を絶対視しないで、来場者との対話から芸術の価値を問い直そうという試みだ。

 「すべて―」は東日本大震災後に月刊誌で連載し、2012年11月に単行本化。3月には第3回広島本大賞に選ばれた。温かい絵と短い言葉で、原発誘致をめぐる都市と地方の関係を寓話(ぐうわ)として描いた。

 靴を脱いで会場に入ると、床には「すべて―」の原画が無造作にちりばめられている。印刷では分からない、手描きの色むらや修正のでこぼこが残る約220枚。来場者は、座って原画を拾い読みしたり、単行本を読んだり、壁面に展示する新しいドローイングを眺めたり。西島さんが作曲、演奏したピアノ曲が流れ、思い思いに過ごす。

 漫画家の展覧会は原画を額に収める展示が多い。しかし、西島さんは「出版物として大量に複製された後の原画に、もはや価値はないのではないか」と考えた。「出版という形式にとらわれない、別の価値観を生み出したい」と狙いを語る。

 アートディレクターの小鍋藍子さん(34)は会社勤めをしながら、マンション一室で展覧会を企画、運営する。木、土、日曜のみ開く。お土産のサイン本付きで650円。イベント時は千円。会期は6月8日まで。メール予約が必要。aikokogallery@gmail.com(渡辺敬子)

(2013年5月22日朝刊掲載)

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