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社説・コラム

天風録 『「当たり前」の世界』

 朝の散歩で立ち寄る神社の境内、手水(ちょうず)舎に水が戻ってきていた。新型コロナ対策で2カ月前、ひしゃくが撤去され、水も止められていたが、先週末から元の姿に。「当たり前」の風景が少しずつ復活している▲海の向こうでも、外出禁止などが緩和されつつある。米国ではトランプ大統領が2カ月半も自粛していたゴルフに興じた。もちろん、いつも通りマスクはしないまま。トップがこれでは感染防止のため、マスク着用を呼び掛けても効果は上がるまい▲まっとうな判断ができていない証しだろう。なにせ政権内では先日、爆発を伴う核実験の再開まで議論したくらいだ。ロシアや中国がこっそりやっているから負けられない―。そんな危うい考えが背景にあるようだ▲中ロの動きが事実だとしたら言語道断だ。ただそうだとしても米国の後追いが許されるはずはない。歯止めがきかなくなれば行き着く先は核軍拡競争しかなかろう。ウイルス対策で国際協調こそが求められているのに▲誰も望まぬ「力こそ正義」の国際社会に逆戻りさせる考えなのか。平和をむしばむ核兵器をさらに拡充させるつもりか。そんな政治家はいないのが「当たり前」の世界にしなければ。

(2020年5月25日朝刊掲載)

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