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被爆者「仕方ない」 8・6式典縮小 工夫求める声も

 新型コロナウイルス対策で、広島市の松井一実市長が平和記念式典の具体的な縮小策を表明した29日、被爆者には「残念だが仕方がない」との受け止めが広がった。被爆75年の節目だけに、核兵器廃絶への思いを広く共有するための工夫を求める意見も上がった。(明知隼二、久保田剛)

 平和記念公園内にある会場の参列者席は例年と比べて9割以上減り、訪れた人が自由に座れる一般席は設けられない。密集を避けるための入場規制が敷かれ、式典の時間帯には会場に近づけなくなる見通しだ。

 広島県被団協(坪井直理事長)の箕牧(みまき)智之理事長代行(78)は「あの日を思い起こし、共有する人が減るのはさみしいが、平和を願う式典で感染を広めてはならない」と理解を示した。平和への思いを継承するため、若い世代が参加する催しは残すよう要望した。

 もう一つの県被団協の佐久間邦彦理事長(75)は、式典を同時中継する会場について、感染対策を施した上で数を増やすよう求めた。「参加を望む人たちの思いをくむ必要がある。1人でも多くの人が式典を通じて核兵器廃絶の思いを共有できるよう、工夫してほしい」と訴えた。

 式典では、歴代の市長が時代背景を反映した平和宣言を読み上げてきた。近年は、核兵器禁止条約への参加を日本政府に直接求めるかどうかなどを巡り、松井市長の姿勢が注目された。

 原爆資料館元館長の原田浩さん(80)は「会場に人が集えない以上、市長が世界に発信する宣言の重みは増す。被爆75年の節目に何を語るのか、これまで以上に問われる」と見立てた。

一般席なし 時間短縮も 松井市長一問一答

 広島市の松井一実市長の記者会見での主なやりとりは次の通り。

  ―新型コロナウイルスで縮小するとした平和記念式典の規模の検討状況は。
 平和記念公園の芝生内で参列者席を確保するが、2メートルの間隔を空ける制約がある。できるだけ多くの被爆者や遺族に参列してほしいので、一般席は設けない。海外の国家元首や国連関係者の参列は、入国制限を踏まえると難しい。

 公園内は例年、人が密集するため、入場規制を考えている。市民には自宅のテレビなどで見てほしい。

  ―式典のプログラムの変更はありますか。
 コーラスグループが大がかりに歌う場面は控えようと考えている。会場で被爆ピアノを演奏し、独唱での披露を探る。式典の時間が短くなる可能性はある。

  ―こども代表の「平和への誓い」はどうしますか。
 懸念していたが、発表に向けて学校側が準備を頑張ってくれている。ぜひ、例年通りに実施したい。

  ―国内では、新型コロナの感染者が再び増えている地域もあります。
 悩ましい問題だ。都道府県の遺族代表に式典の参加を案内する際、状況が改善しない地域からは出席を控えてもらうことがあり得るとの注意書きを添えようと考えている。

(2020年5月30日朝刊掲載)

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