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「恐ろしい」「自国中心」 核で対抗 露の新指針 広島の被爆者

 ロシアのプーチン大統領が核兵器の先制使用を含めた新たな指針に署名したのを受けて、広島の被爆者からは3日、憤りや不安の声が上がった。専門家からは、緊張が高まっている米ロ間の駆け引きとの見方が出ている。

 ロシアの新たな指針は、弾道ミサイル発射の情報を入手した場合の核兵器の先制使用や、通常兵器による攻撃に核兵器で反撃する可能性などに踏み込んだ。

 広島県被団協(坪井直理事長)の箕牧(みまき)智之理事長代行(78)は「恐ろしい話だ。核兵器の廃絶を求める被爆者の声など聞く気もないのか」と憤った。トランプ米大統領が強い姿勢で反応し、米ロ間の応酬が過熱するのを懸念した。

 もう一つの県被団協の佐久間邦彦理事長(75)は「どちらも自国中心の行動ばかりだ。核の先制使用はしないと宣言するなど、まずは緊張緩和の努力をするべきだ」と訴えた。

 NPO法人ピースデポ(横浜市)の梅林宏道特別顧問(82)は、核使用の具体的な想定を正式に文書化した点に着目。「米国へのけん制であると同時に、これ以上の競争を続けるべきではないとのメッセージでもある」と分析した。ロシア側には、米国を核軍縮交渉のテーブルに着かせたいとの思惑があるとみている。(明知隼二)

菅氏 露に警戒感

 菅義偉官房長官は3日の記者会見で、核の先制使用の条件を緩和したロシアに警戒感を示した。「引き続き関心を持って注視していきたい」と述べた。「地域の安全保障に与える影響を念頭に、米国とロシアの間の関連動向は情報収集、分析している」とも強調した。

 ロシアのプーチン大統領は、自国や同盟国に対する確度の高い弾道ミサイル発射情報などがあれば核兵器の先制使用などを認めるとする「核抑止力の国家政策指針」に署名。背景には、米国による宇宙での軍拡やロシアへの攻撃の懸念などがあるとみられている。

(2020年6月4日朝刊掲載)

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