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被服支廠 証言集を寄贈 広島県・市に市民団体

 広島市内最大級の被爆建物「旧陸軍被服支廠(ししょう)」(南区)の全棟保存を求める市民団体「旧被服支廠の保全を願う懇談会」が3日、建物で被爆した人たちの証言集を広島県と市に寄贈した。記憶の継承や、活用策の議論に役立ててもらう。

 証言集は、建物内にいた被爆者や救護者の話を収めた「赤レンガ倉庫は語り継ぐ」(A4判、146ページ)。県庁では多賀俊介副代表(70)たち3人が、4月に被服支廠の専任となった県経営企画チームの三島史雄政策監に3冊を届けた。

 県は所有する建物3棟について、安全対策の原案として「2棟解体、1棟の外観保存」の2020年度の着手を打ち出したが、被爆者たちの反発などで先送りを決定。今後は21年度予算編成に向けて議論する姿勢を示している。

 多賀副代表は「戦前の軍都の歴史や被爆の惨状を伝える貴重な建物。次世代の子どもに引き継ぐため、国、市と幅広く活用策を検討してほしい」とあらためて要望した。三島政策監は新型コロナウイルスの影響で検討が遅れていると説明した上で「3者で方向性を整理したい」と答えた。

 証言集は3月に500冊を印刷。市にはこの日、14冊を贈った。全国の図書館にも郵送した。(樋口浩二)

(2020年6月4日朝刊掲載)

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