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豪兵撮影写真デジタル化 広島大文書館が公開 復興期の広島

 戦後の占領期、元オーストラリア兵が広島市や呉市で撮影した写真が、広島大文書館(東広島市)で閲覧できるようになった。復興する街や人々の暮らしを鮮明に伝えるカラーと白黒の計877点。同館が遺族宅に残るフィルムを複写し、デジタルデータ化した。とりわけカラー写真は当時の色彩をとどめる希少な記録だ。(林淳一郎)

 撮影者は、ビル・シェリフさん(2009年に82歳で死去)。英連邦軍の一員として1948年2月から53年3月までの約5年間、呉市や宮島町(現廿日市市)に駐留した。職務の合間、愛用のカメラ2台を抱え各地を巡ったという。

 写真877点の内訳はカラー358点、白黒519点。広島、呉、江田島、岩国のほか、東京や大阪、愛媛、大分での撮影を確認できる。一部は93、04年に広島と呉で展示されたが、今回が初公開の写真も多い。

 中でもカラー写真は貴重だ。英連邦軍の保養所になった宮島ホテルは木造4階建て本館の白っぽい壁が写る。赤字で「立入禁止」と書いた看板が立ち、日本人が勝手に入れなかった占領期の状況を伝える。

 広島、呉市街の写真も多い。百貨店の売り出し幕、晴れ着姿の女性、映画の看板などが写り、原爆や空襲で焼けた街が再生していく息吹を感じ取れる。一方、旧呉海軍工廠(しょう)に引き揚げられた軍用船など、生々しい戦争の跡もうかがえる。

 45~52年の占領期、カラーフィルムの現像所は日本になく、事実上、撮影はシェリフさんら占領軍関係者に限られていた。広島大文書館の石田雅春助教は「当時の暮らしが色彩を伴って分かる。高度成長期にがらりと変わる前の風景も分かり、貴重な史料だ」と注目する。

 同館へ写真保存を打診したのは、元会社員の小田和美さん(62)=広島市中区。85年に平和記念式典を各国へラジオ放送した活動に携わり、放送を聴いたシェリフさんが写真6枚を郵送してきたのが出発点になった。

 シェリフさんが他界した後の09、11年、「撮影された日本でも伝え残していきたい写真」と、自らオーストラリアへ赴いて調査。12年に遺族と広島大が著作権のライセンス契約を交わし、同館が写真のデジタルデータ化を進めてきた。

 写真は、いりこ干しや船上で生活した漁師の家船(えぶね)など瀬戸内の営みも捉えている。「日常にカメラを向けたのもシェリフさんの特徴」と小田さん。撮影地不明の写真もあり、「多くの人に見てもらい、写真に新たな価値が吹き込まれていってほしい」と期待する。

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 写真は広島大文書館でプリントを閲覧できる。英連邦軍の退役軍人協会機関誌などを含めた目録が同館ホームページに載る。複写は遺族の了承が必要、使用料がかかる可能性がある。同館Tel082(424)6050。

 広島大文書館提供。撮影は1948年2月から53年3月までの間で、詳細は不明。

(2013年5月28日朝刊掲載)

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