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「観覧料」名称使わず 原爆資料館 要望受け見直し

 広島市は12日、原爆資料館(中区)で受け取っている料金について、現在の名称「観覧料」を使わないようにすると明らかにした。「娯楽性を感じる」「ふさわしくない」などとして、被爆者や市民から変更を求める陳情や意見が相次いでいた。市は「誤解を招かず、分かりやすく、丁寧な表現に変える」と説明。文章による説明に切り替える方針で、改める時期などを詰める。

 資料館では、東館1階の総合案内や入り口のガラス扉、パンフレットなどに料金案内として「観覧料」と印字している。市によると、総合案内や喫茶などがある東館1階への入館は無料だが、2、3階や本館にある常設展示を見る場合は有料。料金区分を明確にさせるため、資料館ができた1955年から「観覧料」と表現してきたという。

 一方、この表現に違和感を抱く被爆者や市民は少なくなかった。3歳の時に自宅近くの宝町(現中区)で被爆した安佐北区の上田護さん(78)もその一人。両親と姉を原爆に奪われた半生を振り返る中で「被爆者のむごい写真や遺品が並ぶ原爆資料館にはそぐわない」との思いを強めてきた。

 上田さんは昨年10月、友人とともに、「観覧料」の表記の変更を求める陳情書を市議会へ提出した。市にはほかにも「ふさわしくない」などの意見が寄せられており、同様の声は中国新聞の投書欄でも掲載されている。これらを踏まえて市は、表記の在り方を本格的に検討してきたという。

 長崎原爆資料館(長崎市)や沖縄県平和祈念資料館(糸満市)も同様に「観覧料」の表現を使っている。広島市は「観覧料」の代わりに、文章で分かりやすく説明する方針。稲田亜由美・被爆体験継承担当課長は「市民の思いをしっかり受け止めたい。看板を一新するかどうかなど、具体的な修正方法や時期は今後検討する」と話している。(加納亜弥、新山京子)

(2020年6月13日朝刊掲載)

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