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慰霊行事にコロナの影 被爆75年 縮小・中止相次ぐ

 被爆75年の節目を迎える広島で、新型コロナウイルスの感染を予防するために慰霊などの営みを縮小したり、中止したりする動きが加速している。原爆で多くの生徒が犠牲となった旧制広島一中(現国泰寺高、広島市中区)と広島二中(現観音高、西区)の慰霊祭は、いずれも大幅な縮小が決まった。被爆者団体では活動方針などを決める総会を取りやめる事態が生じている。(明知隼二)

旧制一・二中

 一中慰霊祭は7月26日、国泰寺高の敷地内にある慰霊碑前で営まれる。昨年は生徒約100人を含め、400人ほどが参列したが、今年は100人以内をめどとする方針を決めた。

 一中では生徒353人が犠牲となった。同窓会によると、会場は密集や密接の状態となる上、高齢の参列者も多く、リスクが高いと判断したという。案内状では「コロナ禍の影響が大で、縮小化・簡素化した慰霊祭を執り行う」とし、年齢や体調を考慮した上での参列を呼び掛けている。

 国泰寺高は今年、週末の慰霊祭に合わせて登校日を設定した。初の試みだが、生徒の参列は1年生のクラス代表や放送部員たち20人程度となる見込みだ。佐藤隆吉校長は「校内で開かれている慰霊祭を、より多くの生徒が意識するきっかけにしたい」としている。

 二中の慰霊祭は8月6日、平和記念公園(中区)西側の本川河岸にある慰霊碑前で営まれる。生徒346人の名を刻む碑前に、例年は生徒の有志を含む200人ほどが集まる。今年は市の平和記念式典を参考に、1割程度に抑える方針だ。同窓会は「形を変えながらも、被爆の翌年から続く営みだが、遺族も高齢化している」と説明した。

 観音高は新型コロナの影響で夏休みを短縮した。6日は授業があるため、生徒は参列しない方向だ。前日午後に慰霊碑を清掃するなど、生徒が関わる方法がないか検討している。

広島県被団協

 被爆者団体にも影響は広がる。広島県被団協(坪井直理事長)は本年度の総会を、書面での開催に切り替えると決めた。5月30日を予定していたが、延期。高齢者が多く、公共交通機関の利用者もいるため、実際に集まるのは断念した。

 総会では本年度の取り組みとして、被爆者運動を記録するため各地区団体の発足当初の資料を募る▽市内最大級の被爆建物、旧陸軍被服支廠(南区)の全棟保存で日本被団協に連携を求める―などを決めると計画していた。いずれも近く、各地区団体へ書面で諮る。

 毎年8月6日、中区のホテルで百数十人が集まる追悼慰霊式典も縮小する。事務局がある中区のビルに祭壇を設け、役員たち10人程度で営む見通し。「被爆75年の節目なので、小規模でもしっかりとした式典にしたい」としている。

 もう一つの県被団協(佐久間邦彦理事長)は、今月下旬の総会を書面開催とする方針。議案の内容を含めて近く理事会で決定する。

(2020年6月13日朝刊掲載)

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