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壁画模写 被爆者肖像画も 対象の細部に向き合う 広島市立大・筆の里工房連携展

 広島市立大芸術学部(安佐南区)が、長年にわたり文化財の模写や被爆者らの肖像画制作に取り組んでいる。これまでの学生たちがモチーフの細部にまで向き合った数々の力作が、筆の里工房(広島県熊野町)で開催中の企画展に並んでいる。

 奈良の高松塚古墳壁画、法隆寺金堂壁画といった模写は、日本画専攻の学生たちが挑んだ。ざらざらとした壁の質感まで和紙に描き込み、亀裂や剝離も立体的に表現している。

 学生たちは当時の顔料や制作過程を推し量りながら、壁画の写真に基づく原画を引き写す。同大が開学した1994年から続く活動で、文化財の継承を目指すとともに、得た知識や技術を自身の創作に生かす。

 油絵専攻が2004年から続けるのは、被爆者と被爆2、3世の肖像画だ。会場には学生や教授らの作品を展示する。口を固く結んで物思いにふける男性、まっすぐにどこか遠くを見つめる女性…。被爆体験を聞いて仕上げた一枚一枚に無言のメッセージが宿る。

 筆の里工房学芸普及課の松村卓志課長は「過去からの学びが、芸術の未来をつくっていく。その過程を感じてほしい」と話す。

 広島市立大と筆の里工房が昨年ともに設立25周年を迎えた「記念連携展」。写実絵画で知られる野田弘志名誉教授らの作品や、教授たちが使った絵筆なども合わせ約80点を展示している。中国新聞社などの主催で、28日まで。月曜休館。(福田彩乃)

(2020年6月16日朝刊掲載)

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