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社説・コラム

天風録 『とんだブースター』

 米国、ロシアと肩を並べる「宇宙強国」に違いない。年間のロケット打ち上げ回数を見ると今や中国が最も多い。誇らしげに見上げる国民が多いだろうが、中には落ちないかと不安がる人もいるはず。決して杞憂(きゆう)とは言えない▲というのも何度も落ちてきた。ロケットを押し上げる補助装置ブースターが、昨年も一昨年も近くの村に落下。民家を直撃し、火災が起きたことも。有毒な煙が一帯を覆った。24年前は本体が墜落して6人が死亡した▲日本でも起きたかもしれない。北朝鮮などのミサイルをレーダーと迎撃ミサイルで撃ち落とす装備イージス・アショア。山口県と秋田県に配備を進めていた防衛省が、計画を急きょ停止した。ブースターがどこに落ちるか分からないためという▲それでなくても地上イージスの配備先は、標的にされる恐れがある。その上、日本側のミサイルのブースターが近隣住民に被害を及ぼす恐れがあるなんて。とんでもない代物である。地元で反対の声が高いのも当然だ▲ブースターには「後押しする人」の意味も。トランプ米大統領の勧めで現政権が購入を決めた高額な装備。危なっかしい代物を「推進役」はどう落着させるつもりか。

(2020年6月17日朝刊掲載)

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