×

ニュース

原爆症認定 2要件焦点 被爆と疾病の関連 治療の必要性 広島高裁22日判決

 被爆の影響で心筋梗塞や甲状腺機能低下症を患っているのに原爆症と国が認めないのは不当として、被爆者11人が原爆症の認定申請の却下処分の取り消しなどを国に求めた訴訟の控訴審判決が22日、広島高裁である。要件の緩和により積極認定の流れにある中、認定要件である「放射線起因性(原爆放射線と疾病との関連性)」と「要医療性(治療の必要性)」が認められるかどうかが焦点となる。(松本輝)

 原告は広島や廿日市市の70~90代の男女11人。訴状などによると、原爆が投下された1945年8月6日か、その直後に爆心地から1・2~4・1キロで被爆するか入市被爆し、甲状腺機能低下症や心筋梗塞など認定対象の七つの特定疾病を発症。05~14年に原爆症認定を国に申請したが却下された。10年から順次、広島地裁に提訴し、放射線起因性や要医療性があると訴えてきた。

 17年11月の地裁判決は、甲状腺機能低下症や心筋梗塞を患う原告の放射線起因性について「加齢や生活習慣による発症の疑いが残り、放射線被曝(ひばく)が理由でなければ医学的に不自然、不合理な症状の経過があるとはいえない」と否定。白内障の原告が訴えた要医療性は「治療のため必要な手術は予定されていない」として退けた。

 控訴審では、原告11人のうち7人が放射線起因性を巡って争っており「地裁判決は放射線が人体に与える影響が科学的に未解明である点を考慮していない」と批判。「他の発症要因があったとしても、特段の事情がなければ放射線によって発症が促進されたと考えるべきだ」などと訴える。

 これに対し国側は、原告の喫煙歴や年齢も発症の要因になるとし「被爆の程度や疾病との関連性の有無、具体的な症状、病歴も踏まえた地裁判決は正当」などと反論。要医療性に関する主張もぶつかり合う。

 弁護団の池上忍弁護士は「原爆症訴訟は認定基準を満たすかどうかだけではなく、被爆者の被爆状況や症状と向き合って判断することを国に迫る意義がある。司法はその姿勢をくみ、被爆75年の今年、全員を認める判決を」と期待する。

原爆症認定制度
 原爆の放射線で病気になり、治療が必要と認めた被爆者に国が月約14万円の医療特別手当を支給。1957年に制度化された。申請を却下された被爆者の集団訴訟が相次ぐ中、国は2008年に認定要件を緩和。被爆距離などの条件付きでがんや白血病など五つの特定疾病を積極認定する審査基準を導入した。09年に特定疾病に甲状腺機能低下症など2疾病を追加。13年末には心筋梗塞や甲状腺機能低下症は爆心地から約2キロ以内で被爆したか、原爆投下から翌日までに約1キロ以内に入市した人は積極認定するなど基準を見直した。

(2020年6月21日朝刊掲載)

年別アーカイブ