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社説・コラム

天風録 『援助という名のセールス』

 コロナによる落ち込みを取り戻そうと、例年より早く夏物セールを始めた店が多いようだ。先の週末、広島市内の大型店や商店街はどこも結構な人出だった。欲しい物が安く買えれば、やはりうれしい▲そうは問屋が卸さないことで知られるのが、米国の対外有償軍事援助、英語の頭文字でFMSである。かの国の兵器を買うには、国防総省が示す見積価格を前払いする仕組み。納入時に値上がりすれば、差額を支払う▲FMSのSとは「セールス」。それを「援助」と訳したのは一体、誰なのだろう。案外、売り手の「上から目線」をにおわせる名訳かも▲わが防衛相が「配備プロセスの停止」と持って回った言い方をしたイージス・アショアがFMSでの買い物だった。停止するなら今度は、わが国の防衛のために敵基地を先制攻撃する能力が要るとの議論が起きている▲先制攻撃は、専守防衛というわが国の戦後も、きょうで改定60年の日米安保条約も、根底から覆してしまう。これもFMSで大量調達するF35ステルス戦闘機だけでなく、大陸間弾道ミサイルまでそろえようというのか。兵器を売り付けたい大国の思惑を、「援助」と言い換えて済む問題ではない。

(2020年6月23日朝刊掲載)

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