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社説・コラム

天風録 『沖縄慰霊の日』

 きのう沖縄で開かれた全戦没者追悼式。コロナ禍で様変わりした。招待者を県内の人に限ったため、軍縮担当の国連事務次長や、広島、長崎両市長の初出席は実現しなかった▲埋め合わせではなかろうが、玉城デニー知事は平和宣言で両被爆地に言及した。「ヒロシマ・ナガサキと平和を願う心を共有し…」。核兵器廃絶や恒久平和の確立を目指し、総力を挙げて突き進むと力を込めた。目標を同じくする仲間として心強い▲戦禍を経験して語り継ぐ人への感謝も、追悼式で聞かれた。勇気を振り絞って語ってくれたおかげで私たちは平和の尊さを知った、と。高校生が暗唱した自作の「平和の詩」。真っすぐな呼び掛けが胸に響いた▲とはいえ、足元では歳月による風化が進む。沖縄戦で住民が避難した洞窟や壕(ごう)といった戦争遺跡である。県内に1500以上もあるうち、5分の1近くが道路整備などで消失したという▲沖縄で戦火がやみ、原爆が二つの街を破壊して75年。私たちも問われている。貴重な被爆建物をどう守り記憶をどう引き継ぐのか。沖縄の高校生の決意に力をもらう。「真っ暗闇のあの中で/あなたが見詰めた希望の光/私は消さない 消させない」

(2020年6月24日朝刊掲載)

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