96条改正 分かれる意見 中国地方選出国会議員 憲法アンケート
13年6月3日
憲法改正を目指す安倍晋三首相が、その突破口に掲げた96条の改正。中国地方選出の衆参両院議員を対象にしたアンケート結果では、改正への賛否が交錯し、与野党ともに反対・慎重論があった。7月に予定される参院選で焦点となる改憲論議。各議員は、96条改正を含めた改憲に対する考え方について説明責任が問われることになる。(城戸収、坂田茂、藤村潤平)
「国民が憲法について意見を表明する機会を確保できる」。96条改正に賛成する自民党の江島潔氏(参院山口)は国会の発議要件を緩め、その後の国民投票の実施を重視する。同党の橋本岳氏(岡山4区)は「改憲が事実上困難」と3分の2以上の賛成が必要なハードルの高さを指摘した。
これに民主党の江田五月氏(参院岡山)は「改正の先に憲法の改悪が透けて見える」。生活の党の佐藤公治氏(参院広島)も「改正手続きを国家権力の手で安易に変えてはならない」と反発した。
ただ、自民、民主、公明の3党では、改正をめぐり、議員間で賛否が分かれた。自民党では平口洋氏(広島2区)、溝手顕正氏(参院広島)の2人が「発議は慎重に行うべきだ」と否定的な立場を表明した。
参院選を通じ改憲勢力の3分の2確保を目指す考えを示していた安倍首相。だが、96条の先行改正で同調する日本維新の会が従軍慰安婦問題で失速気味になる中、首相は連携に軌道修正を迫られる格好になった。
参院選後、改憲へのスタンスが政界再編の結集軸になるか。「ならない」とした11人の内訳は自民党、民主党各4人、公明党2人、みどりの風1人。「なる」とみる5人は自民党、維新の会各2人、生活の党1人。再編に否定的な意見が多かったのは、首相が改憲をめぐる発言をトーンダウンさせたことも影響したようだ。
現行憲法の評価では、6割に当たる16人が「評価する」と回答した。一方で、9割近い24人が改憲を支持。焦点となる集団的自衛権について、「9条を改正して認めるべきだ」としたのが最多の9人。「憲法解釈の見直しで認めるべきだ」「認めるべきではない」はいずれも6人。残り6人は無回答だった。
だが、改憲論議が国民に身近なテーマとなっていない、との認識が多数を占める。官房副長官で自民党の加藤勝信氏(岡山5区)は「丁寧な議論が必要だ」。同党の寺田稔氏(広島5区)も「熟度ある議論に至っていない」とし、十分な説明が必要とした。
アンケートに無回答だったが取材に応じた同党の竹下亘氏(島根2区)は「安倍内閣が急ぐべきは経済対策や復興。改憲は合意を得ながら進めなければならない」と指摘する。
<主な質問項目>
○現行の憲法を評価しますか。
①評価する②評価しない③どちらでもない
○憲法改正に賛成ですか、反対ですか。
①賛成②反対③どちらでもない
○改憲の発議要件を定めた憲法96条を改正し、必要な人数を衆参両院議員総数の3分の2以上から過半数に緩めるべきだとの主張があります。96条を改正すべきですか。
①改正すべきだ②改正すべきだが、どこを改正すべきか中身の議論が不可欠だ③改正の必要はないが、議論はあってもいい④改正すべきではない
○96条の先行改正は国民の理解が得られると思いますか。
①思う②思わない③分からない
○改憲について国民的な議論が深まっていると思いますか。
①思う②思わない③分からない
○集団的自衛権の行使についてどう考えますか。
①憲法9条を改正して認めるべきだ②憲法解釈の見直しで認めるべきだ③認めるべきではない
○改憲に関する各党・議員のスタンスが、この夏の参院選後の政界再編につながると思いますか。
①思う②思わない③分からない
<憲法に関するアンケートへの回答結果>
党 議員名 現行憲法 改憲の賛否 96条改正 96条先行改正 改憲の国民 集団的 参院選後の
の評価 の賛否 の国民理解 的議論 自衛権 政界再編
自 平口洋 ① ① ④ ② ② ② ②
河井克行 ① ① ① ① ③ ② ①
中川俊直 ③ ① ① ― ― ― ③
寺田稔 ① ① ① ③ ② ② ②
小林史明 ① ① ① ① ② ① ③
橋本岳 ① ① ① ③ ① ① ③
加藤勝信 ③ ① ① ― ― ― ③
小島敏文 ③ ① ① ① ① ① ①
吉野正芳 ① ① ② ① ② ① ②
上杉光弘 ③ ① ① ― ― ― ③
池田道孝 ③ ① ① ― ― ② ③
溝手顕正 ① ① ③ ② ② ① ②
江島潔 ③ ① ① ― ― ― ③
民 津村啓介 ① ① ④ ② ② ③ ②
柚木道義 ① ① ④ ② ② ② ③
柳田稔 ① ① ② ② ② ③ ②
江田五月 ① ③ ④ ② ② ③ ②
川上義博 ① ③ ④ ② ② ― ②
維 平沼赳夫 ② ① ① ① ① ① ①
中丸啓 ② ① ① ① ② ① ③
坂元大輔 ② ① ① ① ① ① ①
公 斉藤鉄夫 ① ① ③ ② ② ③ ②
桝屋敬悟 ① ① ② ② ② ③ ②
生 佐藤公治 ① ① ④ ② ② ② ①
ミ 亀井静香 ― ① ④ ② ② ― ②
亀井亜紀子 ① ③ ④ ② ② ③ ③
無 浜田和幸 ― ① ② ① ② ① ③
無回答 岸田文雄、宮沢洋一、高村正彦、岸信夫、河村建夫、安倍晋三、林芳正、逢沢一郎、山下貴司、細田博之、竹下亘、青木一彦、石破茂、赤沢亮正、阿部俊子(以上、自民党)
【注】敬称略。党派の略称は、自=自民党、民=民主党、維=日本維新の会、公=公明党、生=生活の党、ミ=みどりの風、無=無所属。回答欄の「-」は回答なし
(2013年6月2日朝刊掲載)
与野党に反対・慎重論
発議要件の緩和
「国民が憲法について意見を表明する機会を確保できる」。96条改正に賛成する自民党の江島潔氏(参院山口)は国会の発議要件を緩め、その後の国民投票の実施を重視する。同党の橋本岳氏(岡山4区)は「改憲が事実上困難」と3分の2以上の賛成が必要なハードルの高さを指摘した。
これに民主党の江田五月氏(参院岡山)は「改正の先に憲法の改悪が透けて見える」。生活の党の佐藤公治氏(参院広島)も「改正手続きを国家権力の手で安易に変えてはならない」と反発した。
ただ、自民、民主、公明の3党では、改正をめぐり、議員間で賛否が分かれた。自民党では平口洋氏(広島2区)、溝手顕正氏(参院広島)の2人が「発議は慎重に行うべきだ」と否定的な立場を表明した。
政界再編の軸 多数が否定的
参院選後の展望
参院選を通じ改憲勢力の3分の2確保を目指す考えを示していた安倍首相。だが、96条の先行改正で同調する日本維新の会が従軍慰安婦問題で失速気味になる中、首相は連携に軌道修正を迫られる格好になった。
参院選後、改憲へのスタンスが政界再編の結集軸になるか。「ならない」とした11人の内訳は自民党、民主党各4人、公明党2人、みどりの風1人。「なる」とみる5人は自民党、維新の会各2人、生活の党1人。再編に否定的な意見が多かったのは、首相が改憲をめぐる発言をトーンダウンさせたことも影響したようだ。
改憲論議が不足 指摘の声相次ぐ
国民の理解
現行憲法の評価では、6割に当たる16人が「評価する」と回答した。一方で、9割近い24人が改憲を支持。焦点となる集団的自衛権について、「9条を改正して認めるべきだ」としたのが最多の9人。「憲法解釈の見直しで認めるべきだ」「認めるべきではない」はいずれも6人。残り6人は無回答だった。
だが、改憲論議が国民に身近なテーマとなっていない、との認識が多数を占める。官房副長官で自民党の加藤勝信氏(岡山5区)は「丁寧な議論が必要だ」。同党の寺田稔氏(広島5区)も「熟度ある議論に至っていない」とし、十分な説明が必要とした。
アンケートに無回答だったが取材に応じた同党の竹下亘氏(島根2区)は「安倍内閣が急ぐべきは経済対策や復興。改憲は合意を得ながら進めなければならない」と指摘する。
<主な質問項目>
○現行の憲法を評価しますか。
①評価する②評価しない③どちらでもない
○憲法改正に賛成ですか、反対ですか。
①賛成②反対③どちらでもない
○改憲の発議要件を定めた憲法96条を改正し、必要な人数を衆参両院議員総数の3分の2以上から過半数に緩めるべきだとの主張があります。96条を改正すべきですか。
①改正すべきだ②改正すべきだが、どこを改正すべきか中身の議論が不可欠だ③改正の必要はないが、議論はあってもいい④改正すべきではない
○96条の先行改正は国民の理解が得られると思いますか。
①思う②思わない③分からない
○改憲について国民的な議論が深まっていると思いますか。
①思う②思わない③分からない
○集団的自衛権の行使についてどう考えますか。
①憲法9条を改正して認めるべきだ②憲法解釈の見直しで認めるべきだ③認めるべきではない
○改憲に関する各党・議員のスタンスが、この夏の参院選後の政界再編につながると思いますか。
①思う②思わない③分からない
<憲法に関するアンケートへの回答結果>
党 議員名 現行憲法 改憲の賛否 96条改正 96条先行改正 改憲の国民 集団的 参院選後の
の評価 の賛否 の国民理解 的議論 自衛権 政界再編
自 平口洋 ① ① ④ ② ② ② ②
河井克行 ① ① ① ① ③ ② ①
中川俊直 ③ ① ① ― ― ― ③
寺田稔 ① ① ① ③ ② ② ②
小林史明 ① ① ① ① ② ① ③
橋本岳 ① ① ① ③ ① ① ③
加藤勝信 ③ ① ① ― ― ― ③
小島敏文 ③ ① ① ① ① ① ①
吉野正芳 ① ① ② ① ② ① ②
上杉光弘 ③ ① ① ― ― ― ③
池田道孝 ③ ① ① ― ― ② ③
溝手顕正 ① ① ③ ② ② ① ②
江島潔 ③ ① ① ― ― ― ③
民 津村啓介 ① ① ④ ② ② ③ ②
柚木道義 ① ① ④ ② ② ② ③
柳田稔 ① ① ② ② ② ③ ②
江田五月 ① ③ ④ ② ② ③ ②
川上義博 ① ③ ④ ② ② ― ②
維 平沼赳夫 ② ① ① ① ① ① ①
中丸啓 ② ① ① ① ② ① ③
坂元大輔 ② ① ① ① ① ① ①
公 斉藤鉄夫 ① ① ③ ② ② ③ ②
桝屋敬悟 ① ① ② ② ② ③ ②
生 佐藤公治 ① ① ④ ② ② ② ①
ミ 亀井静香 ― ① ④ ② ② ― ②
亀井亜紀子 ① ③ ④ ② ② ③ ③
無 浜田和幸 ― ① ② ① ② ① ③
無回答 岸田文雄、宮沢洋一、高村正彦、岸信夫、河村建夫、安倍晋三、林芳正、逢沢一郎、山下貴司、細田博之、竹下亘、青木一彦、石破茂、赤沢亮正、阿部俊子(以上、自民党)
【注】敬称略。党派の略称は、自=自民党、民=民主党、維=日本維新の会、公=公明党、生=生活の党、ミ=みどりの風、無=無所属。回答欄の「-」は回答なし
(2013年6月2日朝刊掲載)