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「はだしのゲン」力強さの象徴 麦に込めた願い 映像化 基町高放送部

 基町高(広島市中区)放送部が、故中沢啓治さんの漫画「はだしのゲン」に力強く生きる象徴として出てくる麦をテーマにした映像作品を制作した。9日のNHK杯全国高校放送コンテスト広島県大会に出品する。

 タイトルは「広がる、一穂の麦」。部長の池田愛生さん(17)、宇津宮万実さん(17)、高橋早紀さん(18)の3年生3人が2月から撮影し、約8分にまとめた。「踏まれても麦のように強くなれ」との中沢さんの思いを広めようとしている、NPO法人の事務局長、沖本博さん(69)=廿日市市=の取り組みやインタビューを軸に、ゲンが弟と収穫前の麦を見ている場面や、中沢さんの写真などで構成している。

 沖本さんは、修学旅行生に麦穂を1袋300円程度で売り、各地で成長した穂の一部を送り返してもらい、そこから販売用の穂を育てて循環させることを計画していたが、資金集めに苦労していた。

 協力を求めた中沢さんには「面白い」などと励まされたという。しかし今夏のスタートを前にした昨年末、中沢さんは亡くなった。沖本さんは「麦が全国に広まることを楽しみにしていた中沢さんの平和への願いを大事にしたい」と誓う。

 池田さんらは、沖本さんの計画を1月の中国新聞の記事で知った。「麦を通して平和を訴えようとする思いを広め、原爆や平和について考えるきっかけにしてほしい」と作品の狙いを説明する。

 このほか、2年生5人は、中沢さんのドキュメンタリー映画を作った被爆3世の渡部久仁子さん(32)=安佐南区=に光を当て約7分のラジオ番組を制作、9日の大会に出品する。若い世代が被爆証言を聞き、伝えていく大切さを訴えている。

 西田玲奈さん(17)は「被爆体験を風化させないよう、自分たちにできることは何か考えてもらいたい」と話している。(増田咲子)

(2013年6月3日朝刊掲載)

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