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核兵器禁止条約 あす採択3年 悲願の発効へ あと12ヵ国 被爆地の役割 増す重み

 核兵器禁止条約が国連で採択されてから、7日で3年を迎える。条文が定める「50カ国の批准」で効力を持つことになっているが、加盟国は38にとどまる。核保有国と共に、米国の「核の傘」を求める被爆国日本は条約に背を向けたまま。新型コロナウイルスの影響を受ける中、被爆地の声と国際世論による「もう一押し」の盛り上げが模索されている。(金崎由美、新山京子)

 「総理、被爆75年に政策を転換して条約の署名・批准に向けて取り組むと宣言すれば、最大の実績として歴史に刻まれるでしょう」

 非政府組織(NGO)「核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN(アイキャン))」が6月下旬、カナダ在住の被爆者サーロー節子さん(88)から安倍晋三首相に宛てた書簡を首相官邸に送った。「自国の安全には核兵器による保護が必要、と日本が公言し続けることは、核兵器廃絶へのあらゆる努力を台無しにする」と訴える。

 サーローさんが文案を各国別に練り、条約参加資格を持つ197カ国・地域の首脳に送付。カナダのトルドー首相には、米国の原爆開発計画に同国が関与した史実を指摘し、原爆被害に「遺憾の意」を表すことも求めた。

 核兵器の保有や開発などを全面禁止する条約は122カ国・地域の賛成で採択され、廃絶への重要な一歩を記した。現在、署名国は81。署名を経ず批准に準ずる手続きを取ったクック諸島を加えると、批准も済ませた条約加盟国は38で、1年前から15カ国増えた。

 ただ、批准に向けた国内手続きが進んでいない署名国があるという。米国などの核保有国が、条約に加わらないよう一部の国に圧力をかけている、とも指摘される。サーローさんは「被爆者と世界中の市民が支持している、と背中を押したい」と力を込める。

 世界の核状況は最悪と言われる。9カ国が持つ核兵器は1万3千発以上。米露が危険な対立を重ね、中国の核戦力は増強の一途をたどる。北朝鮮の核問題は進展が見えない。「未発効でも核兵器禁止条約があるからこそ、共通の原則を根拠に『悪い兵器』だと非難できる。条約の重要性は増している」。ICANの川崎哲(あきら)国際運営委員は強調する。

 広島では被爆者7団体が、8月6日にある「被爆者代表から要望を聞く会」で条約署名と批准を日本政府に求めることを決めた。安倍首相の出席を想定し、最重要課題と位置付けた。

 県被団協(坪井直理事長)の箕牧(みまき)智之理事長代行(78)は「節目となる今年の訴えは特に重要だ」。もう一つの県被団協の佐久間邦彦理事長(75)は「新型コロナウイルス対策のように世界全体で核兵器廃絶に向かうべきだ」と強調した。

 川崎さんによると、7日に合わせて1カ国かそれ以上が批准する可能性があるという。「被爆者の悲願」の発効まで、あと12カ国。その後も、被爆国を動かすという被爆地の課題は変わらない。

 サーロー節子さんが安倍首相に宛てた書簡(英文)と、その日本語訳はこちら こちら

(2020年7月6日朝刊掲載)

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