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社説・コラム

天風録 『オンライン世界大会』

 「分かった人は手をグーにして見せて」。画面越しに先生が声を掛けると、子どもが照れながら握った手を差し出す。すぐに「オッケー」と明るい声が返ってきた▲学習塾が子どもたちの自宅と教室をつないで始めたオンライン授業の一こま。新型コロナウイルスの感染を防ぐため、集まらずに授業を続ける試みだ。パソコンの音声が途切れたり親の小言を拾ったり、ハプニングはあるものの特に問題はなさそう▲学校で職場で仲間同士で、いつもの活動を続ける工夫が始まっている。週末には、世界各国から千人を超える人がネット上に集まった。国際NGOが呼び掛けたオンラインの原水爆禁止世界大会。人間の尊厳を奪う核兵器は要らないと、被爆者たちが訴えた▲本当は今頃、核拡散防止条約(NPT)再検討会議に合わせ国連本部がある米ニューヨークで開かれるはずだった。これだけの人が実際に集まれば、どれほどインパクトがあったことか▲未知のウイルスが毎日誰かの命を奪う。それでも核を手放して予算を医療に回す保有国は見当たらない。一堂に会する日はまだ先でも、声を届けるあらゆる策に知恵を絞りたい。命の尊さが身に染みる今だからこそ。

(2020年4月27日朝刊掲載)

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