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[コロナ禍の8・6] 核廃絶訴え 動画に込め 大会ネット開催で原水禁・協 収録や証言中継を準備

 新型コロナウイルスの影響で原水爆禁止世界大会をインターネット上での開催に切り替える原水禁国民会議などが、8月6日の広島大会で配信する動画の収録作業をしている。被爆者の訴えや惨禍を刻む被爆建物を知ってもらい、核兵器廃絶に向けた機運を高める狙い。同日に別のオンライン集会を開く日本原水協などは、被爆者の体験証言を生中継する準備を進めている。(水川恭輔)

 原水禁国民会議は今月5日、広島市中区の原爆ドーム前で事前収録を始めた。広島県被団協(坪井直理事長)の箕牧(みまき)智之理事長代行(78)が、ビデオカメラの前で原爆投下による街の壊滅や放射線被害を説明。「新型コロナの対応に追われる中でも、核兵器廃絶や平和について考え、訴えることを休んでいる時間はない」と力を込めた。

 ドーム前では、地元の高校生が平和を願うスピーチも撮影。被爆者や若者たち30人以上が「原爆を許すまじ」を一部分ずつ歌いつなぐ「リレー合唱」の動画制作を進める。県原水禁などが全棟保存を訴える旧陸軍被服支廠(南区)や、多くの動員学徒が犠牲となった学校の慰霊碑を紹介する映像も作っている。

 原水禁などの広島大会のオンライン集会は、8月6日午後1時から約50分を予定する。県原水禁の金子哲夫代表委員(71)は「例年の大会参加者は、広島を訪れたことのない人が多い。映像を通じて、悲惨な被害の実態をできるだけ多くの人に知ってほしい」と話す。

 日本原水協などの原水爆禁止世界大会は同日午前10時から開く集会で、ビデオ会議システムを使って広島の被爆者の体験証言を生中継する。2017年にノーベル平和賞を受けた非政府組織(NGO)「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN(アイキャン))のベアトリス・フィン事務局長たち、海外で反核活動に携わる市民に発言してもらう予定もある。

 県原水協は、集会を大きな画面で一緒に見られる会場を、広島、尾道、福山市など県内各地に設ける計画だ。古田文和事務局長(73)は「みんなで見れば意見を交換しやすく、いっそう元気がわく。海外の市民の声に触れられる貴重な機会でもあり、新型コロナの感染防止を考えながら万全の準備をする」と話している。

原水爆禁止運動
 1954年の米ビキニ水爆実験で日本のマグロ漁船「第五福竜丸」が被曝(ひばく)したのをきっかけに、核兵器に反対する大衆運動として全国に広がり、55年8月6日に平和記念公園(広島市中区)にあった市公会堂(後に広島国際会議場へ建て替え)で第1回世界大会を開いた。運動はその後、旧ソ連の核実験などを巡る路線対立を理由に分裂。世界大会は、原水協と原水禁がそれぞれで開くようになった。世界大会は77年から一時、統一されたこともあったが、86年以降は別開催が続いている。

(2020年7月12日朝刊掲載)

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