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連載・特集

墨は流すもの 丸木位里の宇宙 <1> 桜美人図

 広島市安佐北区出身の画家、丸木位里(1995年に94歳で死去)や関連作家の作品約100点を集めた特別展「墨は流すもの―丸木位里の宇宙」(中国新聞社など主催)が、三次市東酒屋町の奥田元宋・小由女美術館で開かれている。前衛的な水墨画をはじめ、夫婦で手掛けた代表作「原爆の図」シリーズなど、丸木の画業を一覧できる過去最大規模の作品展。同美術館の永井明生学芸主幹に6点を紹介してもらう。

大和絵風の豊かな色彩

 丸木位里のご遺族宅で新たに発見された初期の美人画の作例です。面相筆を用いた繊細な線描や豊かな色彩による大和絵風の表現は、画家の確かな技量を伝えています。郷里の知人や有力者に依頼して絵を購入してもらい、生活の糧や創作の資金としていたのでしょう。

 絵に押された印には「頼是心真」の文字が刻まれています。「頼を是とする心は真なり」と読むことができますが、この「頼」は画業初期に短期間学んだ日本画家田中頼璋のことを指すと思われます。  位里が若い頃に美人画を描いていたことはご遺族や研究者の間では知られていましたが、作品として確認され、展覧会で公開されるのは今回が初めてです。

 8月16日まで。一般千円、男女ペア1800円、大学・高校生500円、中学生以下は無料。8月12日を除く水曜休館。奥田元宋・小由女美術館☎0824(65)0010。

  (2020年7月7日朝刊掲載)

墨は流すもの 丸木位里の宇宙 <2> さぎ

墨は流すもの 丸木位里の宇宙 <3> 柳暗(りゅうあん)

墨は流すもの 丸木位里の宇宙 <4> 不動

墨は流すもの 丸木位里の宇宙 <5> 自画像

墨は流すもの 丸木位里の宇宙 <6> 原爆―ひろしまの図

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