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連載・特集

墨は流すもの 丸木位里の宇宙 <4> 不動

緑の顔料 重ねて落とす

 第1回岩橋英遠・丸木位里・船田玉樹三人展への出品作で、磨崖仏(まがいぶつ)が描かれています。不動明王の姿が、墨や胡粉(ごふん)を基調とした画面上で、青、緑、赤の諸色を重ねてはこすり落とすことによって浮かび上がっています。

 水墨による多彩な実験的創作を展開した位里ですが、本作品のように緑の顔料の使用が目立つ作品も複数知られています。例えば、1936年の第8回青龍社展で初入選した「池」も、緑色を多用した重厚な絵肌が特徴。翌年の青龍社展への出品作「峡壁」も暗緑色で、油彩画風の厚塗りの画面です。それからおよそ5年後、位里の画業では例外的に、本作品のような仏画や人物画を集中的に制作し、発表しています。(奥田元宋・小由女美術館学芸主幹 永井明生)

 特別展「墨は流すもの―丸木位里の宇宙」(中国新聞社など主催)は、三次市東酒屋町の奥田元宋・小由女美術館で開催中。8月16日まで。一般千円、男女ペア1800円、大学・高校生500円、中学生以下は無料。8月12日を除く水曜休館。同美術館☎0824(65)0010。

(2020年7月10日朝刊掲載)

墨は流すもの 丸木位里の宇宙 <1> 桜美人図

墨は流すもの 丸木位里の宇宙 <2> さぎ

墨は流すもの 丸木位里の宇宙 <3> 柳暗(りゅうあん)

墨は流すもの 丸木位里の宇宙 <5> 自画像

墨は流すもの 丸木位里の宇宙 <6> 原爆―ひろしまの図

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