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連載・特集

墨は流すもの 丸木位里の宇宙 <5> 自画像

絵日記風に心情を吐露

 位里は自画像を複数残していますが、眉間にしわを寄せて苦渋の表情を浮かべている本作品のような姿は、他に類がありません。画面上部には、絵日記のような趣で、画家本人の言葉がつづられています。

 上部の紙片が切れていて、文字が部分的に消えていますが、「戦争にまけた、まけることは分かっていたがそれは言えなかった、おかげで天国に行かずに済んだ、もう何でもしゃべれるが、なかなか筆が動きそうもない」といった内容が読み取れます。

 このように位里が心情を赤裸々に吐露することはまれです。敗戦後間もない混乱期における、画家のありのままの姿を今に伝えています。(奥田元宋・小由女美術館学芸主幹 永井明生)

 特別展「墨は流すもの―丸木位里の宇宙」(中国新聞社など主催)は、三次市東酒屋町の奥田元宋・小由女美術館で開催中。8月16日まで。一般千円、男女ペア1800円、大学・高校生500円、中学生以下は無料。8月12日を除く水曜休館。同美術館☎0824(65)0010。

(2020年7月11日朝刊掲載)

墨は流すもの 丸木位里の宇宙 <1> 桜美人図

墨は流すもの 丸木位里の宇宙 <2> さぎ

墨は流すもの 丸木位里の宇宙 <3> 柳暗(りゅうあん)

墨は流すもの 丸木位里の宇宙 <4> 不動

墨は流すもの 丸木位里の宇宙 <6> 原爆―ひろしまの図

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