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連載・特集

墨は流すもの 丸木位里の宇宙 <6> 原爆―ひろしまの図

大画面に被爆者の群像

 「原爆の図」の連作を描き続け、1972年に第14部「からす」を発表した丸木位里と丸木俊。その翌年に広島市からの依頼で制作されたのが本作品です。長らく原爆資料館に展示され、89年に広島市現代美術館に移されました。

 被爆者で埋め尽くされんばかりの川、座して正面を見据える少女、虹、牛、カラスなど、長年にわたって描かれてきたモチーフが縦4メートル、横8メートルの画面全体にちりばめられています。各所に大きな余白を残しながら、墨と朱を中心に被爆者の群像を描いた本作品は、「アウシュビッツの図」(77年、原爆の図丸木美術館蔵)などの超大作を共同制作する出発点になりました。位里の画業をたどる上でも非常に重要な作品です。(奥田元宋・小由女美術館学芸主幹 永井明生)=おわり

 特別展「墨は流すもの―丸木位里の宇宙」(中国新聞社など主催)は、三次市東酒屋町の奥田元宋・小由女美術館で開催中。8月16日まで。一般千円、男女ペア1800円、大学・高校生500円、中学生以下は無料。8月12日を除く水曜休館。同美術館☎0824(65)0010。

(2020年7月12日朝刊掲載)

墨は流すもの 丸木位里の宇宙 <1> 桜美人図

墨は流すもの 丸木位里の宇宙 <2> さぎ

墨は流すもの 丸木位里の宇宙 <3> 柳暗(りゅうあん)

墨は流すもの 丸木位里の宇宙 <4> 不動

墨は流すもの 丸木位里の宇宙 <5> 自画像

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