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社説・コラム

天風録 『「例外」が招いた感染拡大』

 どんな原則にも大抵、例外がある。江戸時代の鎖国なら長崎・出島といった具合に。コロナ対策で鎖国状態にほぼ等しい今も、沖縄をはじめとする在日米軍基地がそうだ。米兵らは普段と同じくパスポートなしで入国でき、わが政府の検疫も及ばない▲その沖縄の複数の基地で今月に入り、感染が拡大している。しかも米軍は、感染者数は例外扱いとして県に伝達するものの、個々の症状や行動歴といった詳細は明らかにしない。「運用上の理由」という原則論を盾に▲米政府は10月からが新たな会計年度で、年度末となる今が人事異動シーズン。在日米軍も例外ではなく、沖縄への赴任ラッシュに備えて基地の外の民間ホテル1棟を丸ごと借り切ったという▲赴任当初の2週間を隔離するのが目的らしいが、あれだけ広大な基地に余裕がないとは信じられない。こうして一般の米国人は入国すらできないというのに、軍関係者はホテル暮らし。例外が例外を呼ぶとは、まさに▲わが国の安全を守る米軍基地が、周辺住民が不安を募らせる存在となっていいはずはない。ここはわが政府が基地内へクラスター対策班を派遣してはいかが。たとえ、それが例外的措置だとしても。

(2020年7月14日朝刊掲載)

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