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原爆被害者協 月内に解散 広島県世羅 甲山地区 高齢化で会員減 2団体も検討

 広島県世羅町の旧甲山町地区の被爆者たちでつくる「甲山原爆被害者協議会」が、今月内での解散を決めた。高齢化に伴う会員減少で、今後の活動が難しいと判断した。町内にある他の2団体も解散を検討しており、体験継承などが一層の課題になる。(神下慶吾)

 同協議会は1972年ごろ結成。事務局によると、現在の会員は被爆者30人と被爆2世の計32人という。会員有志は毎年8月6日、県被団協が広島市中区で開く式典に出席し、幟町国民学校付近で被爆した、市内を警備する「世羅部隊」の慰霊碑にも参っていた。

 会員たち約60人の被爆や戦争体験を記した冊子「絶叫」を92年に発刊。原爆や戦争の悲惨さを伝えてきた。近年は会員が相次いで亡くなり、3月には会長の浅野智恵子さんも91歳で死去した。総会開催なども年々難しくなっており、今月内での解散を決断。事務局が近く文書で知らせる予定でいる。

 当時女学生で入市被爆した伏原美子さん(90)は「元気な間は、地元の犠牲者にお参りしたいという思いだったが、さみしい」と解散を残念がる。町から救援に入った土居寅雄さん(92)は「一瞬で多くの人が犠牲になった。戦争は絶対してはいけない」と繰り返し訴えてきた。今回の解散を「会長が亡くなり、人が少なくなったので仕方ないだろう」と受け止める。

 世羅町内では、旧世羅町、旧世羅西町地区の両被爆者団体も後継者不足などで解散を検討している。町教委の学芸員林光輝さん(49)は、町内の被爆者たちからの聞き取りを急いでいる。「平和学習や町内展示に生かし、次の世代へ証言を伝える」と話す。

(2020年7月14日朝刊掲載)

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