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[コロナ禍の8・6] 被爆証言ビデオ 英訳倍増 広島市本年度 来日客減 発信を強化

 広島市は被爆75年の節目に当たる本年度、原爆資料館(中区)が作成している英語字幕付きの被爆者証言ビデオを、現在の20本から2倍以上となる50本に増やす。新型コロナウイルスの感染拡大で資料館を訪れる外国人が急減する中、動画サイトなどを通じて被爆証言を国内外に発信し、核兵器廃絶への機運を高める。

 証言ビデオは被爆者1人当たり20~25分で、10分のダイジェスト版もある。1986年度から昨年度末までに計1125本を収録した。このうち本人の了承を得た485本は動画投稿サイト「ユーチューブ」で公開しており、20本には英語で字幕を付けている。

 市は新型コロナの第2波に備えて、海外から資料館を訪れる外国人は当面、回復しないと想定。コロナ禍の中でも被爆者の思いに触れてもらう機会を増やそうと、証言ビデオに字幕を付ける作業を加速させる。具体的には、新たに字幕を付ける本数を、当初予定の10本から30本に引き上げる。

 市は、資料館での感染防止対策も強化する。修学旅行や平和学習で訪れた子どもたちが被爆体験の講話を聴く際に密集状態となるのを避けるため、隣接する広島国際会議場(中区)に会場を広げる。館内のタッチパネル54台には保護フィルムを貼り、アルコールで消毒できるようにする。

 これらに必要な事業費として計2400万円を、2020年度一般会計補正予算案に計上した。市被爆体験継承担当は「コロナ禍でも被爆の実態を国内外に発信するため、できる限りの工夫を重ねる」としている。(加納亜弥)

(2020年7月14日朝刊掲載)

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