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[コロナ禍の8・6] 核情勢に重ね 連帯訴え 平和宣言の文案判明

 広島市の松井一実市長が被爆75年の原爆の日に平和記念式典で読み上げる平和宣言の文案が14日、分かった。新型コロナウイルスの感染拡大と悪化する核情勢を重ね合わせた上で、危機を前に世界の「連帯」を訴える内容。連帯を象徴する言葉として、昨年10月に92歳で死去した元国連難民高等弁務官の緒方貞子さんの言葉を引用する。(明知隼二、新山創)

 松井市長や関係者によると文案は、1918年のスペイン風邪流行から第二次世界大戦、原爆投下に至るまでに膨大な人命が失われた歴史を紹介。新型コロナの脅威に直面する今、悲惨な歴史を繰り返さないためには自国第一主義を乗り越えた連帯が必要と訴える。

 連帯を象徴する言葉として、緒方さんの「大切なのは苦しむ人々の命を救うこと。自分の国だけの平和はありえない」を引く。ローマ教皇フランシスコが昨年11月、平和記念公園(中区)での演説で語った「思い出し、ともに歩み、守る」との一節も盛り込む。

 核兵器を巡る国際情勢が厳しさを増す中、多国間が連帯する事例として、核拡散防止条約(NPT)と核兵器禁止条約の意義をあらためて強調する。世界の指導者が広島を訪れて被爆の実態に触れ、核兵器廃絶に向けた議論に生かすことも求めるという。

 有識者や被爆者たち7人が宣言の内容を検討する懇談会がこの日、市役所で非公開の会合を開催。市によると、文案についておおむね了承したという。新型コロナの影響で5、6月の会合は文書による意見聴取に切り替えており、委員が集まったのは今年初だった。

 松井市長は懇談会での議論を踏まえて、平和宣言を8月上旬までに起草する。

(2020年7月15日朝刊掲載)

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