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敵基地攻撃能力の保有 「世論を考慮して」 広島市長

 広島市の松井一実市長は13日、河野太郎防衛相が検討する考えを示した敵基地攻撃能力の保有について、政府に慎重な議論を促した。自身が平和記念式典で読む平和宣言では、相手を脅して抑止する発想をやめるよう訴えてきたと説明。「被爆者をはじめ、国民世論を十分に考慮して議論してほしい」と求めた。

 松井市長は記者会見で「安全保障は国政の場で議論すること」と前置きした上で、議論に当たっては被爆者を含む世論が重要と指摘。「平和宣言では、疑心暗鬼に基づいて最悪の事態を想定し、相手を脅して抑止する発想をやめるよう述べてきた。それが市民社会の総意になれば、おのずと違った議論の展開もある」と展望した。

 弾道ミサイルが発射される前に発射台などを壊滅させる敵基地攻撃能力の評価は「個々の問題の善しあしとなると、政争の具にされ、平和を追求する本来の思いが台無しになりかねない」と明言を避けた。その上で、平和を追い求める世論の形成に注力する姿勢をあらためて示した。

 政府は萩市などを候補地とした地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の配備を断念し、敵基地攻撃能力の保有の是非を検討する考え。専守防衛の原則に反するとの指摘が出る中、河野防衛相は「憲法上は可能」との見解を示している。(明知隼二)

(2020年7月14日朝刊掲載)

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