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[コロナ禍の8・6] 「ようやく顔見て証言」 被爆者 原爆資料館で4ヵ月半ぶり活動

予防・発信の両立 模索続く

 原爆資料館(広島市中区)で15日、約4カ月半ぶりに開かれた館内での被爆証言を、語り手となる被爆者たちは「ようやく顔を見て話せる」と感慨深く受け止めた。長期間の中断に追い込んだ新型コロナウイルスは、東京を中心に感染が再び拡大している。感染予防と被爆の実態の発信をどう両立していくか、模索が続く。(明知隼二、寺本菜摘)

 「よく来てくれました」。被爆者の岡田恵美子さん(83)=東区=は、兵庫県明石市から訪れた小学6年生に切り出した。朝に家を出た姉が二度と戻らなかったこと、倒壊した建物の下敷きになった少女を救えず逃げたこと…。子どもたちを見渡し、何度も「想像してみて」と呼び掛けた。

 証言を聞いた男子(11)は「原爆のむごさが、岡田さんの悲しみをこらえるような声や表情から伝わってきた」と話した。

 資料館で約20年間、証言を重ねる岡田さん。コロナ禍前は「証言できることが当たり前だと思っていた」と振り返る。ついたてを挟み、距離を置いての証言にもどかしさもあるが、久しぶりの感覚をかみしめた。

 学校側は、資料館や宿泊施設の感染防止対策を下見し、保護者にも説明した上で訪問を決めたという。担任教諭は「児童は実際に話を聴くことで、事前学習よりも理解を深めたようだ」と手応えを感じていた。

 資料館は団体客の受け入れが本格化する時期を、修学旅行シーズンとなる9月以降とみている。「被爆証言を聞く人数の制限や入館時の消毒など、証言者と入館者を守るための対策を徹底していく」としている。

(2020年7月16日朝刊掲載)

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