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[コロナ禍の8・6] 被爆前後VR完成 来夏に 延期逆手 内容を充実 福山工高 休校影響

 被爆前後の広島を再現する仮想現実(VR)の映像を制作している福山工業高(福山市)の計算技術研究部が、被爆75年の夏を目指していた作品の完成を1年延期した。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う休校で作業が滞るなどしたため。延期を逆手に、さらに内容を充実させ、作品の完成度を高める。

 今年8月5日に広島市中区で完成した作品の体験会を開く予定だった。しかし、新型コロナの影響で学校が休校になり、制作のペースがダウン。被爆者に検証作業を依頼していたが、感染リスクを考えて作業は中止せざるを得なかった。

 同部は、原爆の悲惨さを伝えようと2010年に被爆前の爆心地のCG制作を始め、16年からはVRの制作に切り替えた。3年石岡宏望(ひろむ)さん(18)は「自分たちの代で完成させられないのは残念」と肩を落とす。それでも「もう1年あれば、新しい情報を取り込み、さらに当時の生活を感じられる町が再現できる」と前を向く。

 1年の延長期間を生かし、被爆前の町を歩くだけでなく、被爆後のきのこ雲の下の様子を新たに加える。米軍機エノラ・ゲイが原爆を投下。周囲が暗闇になり、炎とがれきに包まれた町を歩けるようにする。

 作品のメニューも増やす。旧日本軍の特攻兵器「回天」の内部などを体験できる「VR回天」と「VR防空壕(ごう)」の完成を見据える。部長の3年平川聖央(せな)さん(18)は「昨年夏の体験会では、完成途中の作品にも100人以上が並んだ。来年はより多くの人に体験してもらいたい」と期待する。

 バトンを託された後輩たちも意気込む。2年渡辺隼人さん(16)は「先輩たちが10年間積み重ねてきた努力を結実させ、被爆76年の夏には必ず披露したい」と力を込める。(湯浅梨奈)

(2020年7月17日朝刊掲載)

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