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原爆ドーム 筒状に壁抜き取り 耐震調査で作業公開

 世界遺産の原爆ドーム(広島市中区)の耐震性を調べている広島市は4日、壁の一部を筒状に抜き取る作業を公開した。

 建物の一部を抜き取る調査は1996年の世界遺産登録後で初めて。この日はドーム本体の南にあるれんが壁に、作業員が約10メートルの高さの足場から特殊なドリルを当て、直径20センチ、長さ60センチの円筒形にくりぬいた。

 作業は3日に始まった。震度6弱の地震が起きた場合、揺れの負荷が集中するとみられる壁から15カ所を選定。24日まで試料を抜き取る作業を進める。

 市は過去の保存工事で、壁のひび割れなどに補強のためのエポキシ樹脂を注入している。試料は日本建築総合試験所(大阪府吹田市)で分析。れんがの強度や樹脂の劣化状況などを調べる。それらのデータを基に、市は本格的な耐震補強工事が必要かどうかを本年度中に判断する。

 分析を終えた試料は壁に埋め戻す。三重県伊賀市から家族旅行で訪れた佐々木サヨ子さん(90)は「ドームは今のまま残し、次世代が戦争反対の決意を胸に刻む場であってほしい」と見守った。作業は7月26日まで。(加納亜弥)

(2013年6月5日朝刊掲載)

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