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中沢さんの詩 妻が朗読 広島で「ゲン」40年イベント

 原爆投下後の広島を描いた漫画「はだしのゲン」の作者で、昨年12月に73歳で亡くなった中沢啓治さんの未発表の詩が4日、原爆資料館東館(広島市中区)であったイベントで披露された。「水の都の広島」から世界の海に向け、平和への思いが広がるよう願う内容で、妻ミサヨさん(70)が読み上げた。

 イベントはゲンの連載40周年を記念してファンたちが開いた。「広島 愛の川」と名付けた詩は3番まである。中沢さんが手術のため中区の病院に入院した6年前に作った。紙に書いて中区の自宅の本棚に置いていたという。

 原文は「1、愛を浮かべて川流れ/水の都の広島で/語ろうよ川に向って/怒り、悲しみ、優しさを/ああ、川は広島の川は/世界の海へ流れ行く 2、愛を育てた太田川/手取り駆けった川堤/伝えよう川に向かって/怒り悲しみ優しさを/ああ、川は広島の川は/世界の海へ流れ着く 3、愛する我が子に頬ずりし/姿川面に写す日々/誓おうよ 川に向かって/怒り、悲しみ、優しさを/ああ川は広島の川は/世界の海へ巡り行く」とつづる。

 ミサヨさんは朗読後、中沢さんとの思い出を語った。1966年に母を亡くした中沢さんが原爆漫画を描き始めた当時の様子を「一気に描いていた。胸に詰まったものを出したのだと思う」と話した。「気持ち悪がられる絵もある。ストーリーでいかに引きつけるかいつも考えていた」と明かした。(田中美千子)

(2013年6月5日朝刊掲載)

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