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[コロナ禍の8・6] 「平和の鐘」 今年も響け 祈念式 一般参加募らず 被爆75年 規模縮小して開催

 被爆した職人たちが戦後の焼け跡で集めた金属で造った「平和の鐘」が8月6日、鳴らされる。旧広島市民球場跡地(広島市中区)近くにあり、実行委員会の主催で5年前から祈念式を開いてきた。今年は新型コロナウイルスの感染拡大で開催を危ぶんだが、一般参加は募らず関係者だけで「復興の音色」を響かせることにした。(新山京子)

 高さ1・4メートル、重さ800キロ。高さ9メートルの鉄製の鐘楼につるされた洋風のベルで、表面にハトと「NO MORE HIROSHIMAS(ノーモア・ヒロシマズ)」の文言を刻む。

 1949年に広島銅合金鋳造会が造り、広島平和記念都市建設法の成立を記念し市に寄贈した。「第3回平和祭」(現平和記念式典)で当時の浜井信三市長が鳴らしたが、その後使われないまま年月が過ぎた。

 この鐘の存在を広く伝えようと、元市職員の高東博視さん(74)=佐伯区=らが「響け!平和の鐘実行委員会」を2015年に結成。毎年8月6日、平和記念式典の後に集まった市民が順番に鳴らしている。今年は午前9時半から実行委の15人が黙とうし、「ブリキ缶をたたいたような」素朴な音を出す。

 今年5月には、鐘の周辺が会場になった「全国都市緑化ひろしまフェア(ひろしま はなのわ 2020)」でも来場者に鳴らしてもらう準備をしていた。ところがコロナ禍で中止に。「被爆75年に何もないのはさみしい」と、規模を縮小しての祈念式開催を決めた。実行委の松波龍一さん(73)=同区=は「鐘の周囲で音色を聞いてほしい。広島の悲劇を繰り返すな、という被爆者の思いを届けたい」と話している。

(2020年7月30日朝刊掲載)

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