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大林監督遺作 反戦かみしめ 公開 尾道にファン40人

 尾道市出身で4月に82歳で亡くなった映画監督大林宣彦さんの遺作「海辺の映画館 キネマの玉手箱」が31日、公開された。20年ぶりに尾道でロケをし、反戦を訴えた作品。同市のシネマ尾道にもファンが集い、大林さんの遺志をかみしめた。

 広島県内外から約40人が入場。河本清順支配人(43)が上映に先立ち、「監督の集大成となる作品。多くの人々に愛されてほしい」とする平谷祐宏市長のメッセージも紹介した。

 尾道の海辺にある映画館が舞台。観客の青年がスクリーン内に入り込んで幕末や太平洋戦争などの映画の世界を旅し、数々の死に直面。ヒロインたちを広島の原爆から救おうとする。大林さんの記憶に刻まれた、尾道水道や路地の風景も映し出される。

 岐阜県から訪れた写真店経営谷英樹さん(50)は、劇中に登場するアニメーションの原画を手掛けた。「戦争は嫌というメッセージの根底には、軍国少年だった監督の敗戦経験がある。2年前に見た尾道ロケでも、今までにない熱意を感じた」と余韻に浸っていた。

 広島県内では計5館で公開中。河本支配人は「上映後に自然と拍手が起き、大林さんの力を再認識した。町ぐるみで功績を伝えるため、他の作品の上映も重ねていく」と話した。(田中謙太郎)

(2020年8月1日朝刊掲載)

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