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追悼と贖罪 アートに映す ホーグランド監督新作 広島で公開へ

 被爆遺品を撮った写真家石内都さんのカナダでの個展に密着した映画「ひろしま 石内都・遺(のこ)されたものたち」が8月に広島で公開される。広島市を訪れた米国人女性のリンダ・ホーグランド監督は「ヒロシマの『呪縛』から解き放たれた作品」と語る。

 花柄のワンピース、水玉のブラウス…。1年半前の写真展で、美しい作品に見入る十数人の声をつないだ。きのこ雲もがれきの街も出てこない。「本質的なアートを前に人は立ち止まる。石内さんの魔術に包まれた空間で巡らされる、それぞれの思いに迫りたかった」

 宣教師の娘として京都で生まれ、中学まで防府市などで育った。小学4年の授業で母国の原爆投下に触れた。級友の視線が忘れられず「広島はずっと怖い所だった」。

 「呪縛」が消えたのは、2010年の監督デビュー作「ANPO」がきっかけ。「広島の人が誰よりも作品を愛してくれた」。米国での写真展で出会った石内さんとつくった新作。「追悼と贖罪(しょくざい)と敬意を余すところなく込めた」と充実感をにじませる。広島市中区のサロンシネマで8月3日から公開。再訪し、原爆の日を初めて広島で過ごすつもりだ。(松本大典)

(2013年6月8日朝刊掲載)

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