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父の被爆体験 映画で発信 広島で上映 「許し」の心訴え 米在住の美甘さん製作

 広島市東区出身の被爆2世で米国在住の美甘章子さん(58)が、父進示さん(94)=東区=の過酷な被爆体験と、「許し」の心で平和を思う大切さを伝える51分間のドキュメンタリー映画「8:15」(8時15分)を完成させた。八丁座(中区)で上映が始まった。

 原作は、美甘さんが日本で2014年に講談社エディトリアルから出版した「8時15分 ヒロシマで生きぬいて許す心」。約1・2キロで被爆して大やけどを負いながら、数々の苦難を乗り越える進示さんの姿を、被爆死したその父福一さんとの絆を軸に描写する。

 俳優の田中壮太郎さんが進示さん役を務め、体験を回想する映像が中心。広島の惨状や、焼け跡で福一さんの形見となる懐中時計を掘り出すシーンは、俳優の演技をニューヨークで収録した。世界中の若い人に注目してもらおうと、ジョナサン・ヘッフェルフィンガー監督(米ニューヨーク)らが再現映像を生かす手法を提案したという。

 美甘さんは広島大卒業後に渡米し、臨床心理医としてカリフォルニア州で暮らす。映画化を決めたのは、被爆75年の節目を控えた昨年秋。7月29日に八丁座で試写会を開き「広島と長崎が決して過去ではなく、将来を脅かす問題だと世界に伝えたい」と力を込めた。

 上映は20日まで。新型コロナウイルスの感染拡大が深刻な米国では、動画配信サイトを通して発信していく予定。(金崎由美)

(2020年8月3日朝刊掲載)

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