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県被団協 初期の歩み 広島大文書館 資料原本500点確認

 広島大文書館(東広島市)は3日、1956年に結成された広島県原爆被害者団体協議会の設立準備や、初期の活動状況を示す資料の原本を確認したと発表した。55年9月~61年4月ごろに発信した文書の控えや理事会の記録、関係者の書簡など約500点があった。公開は9月末を予定している。

 県被団協の結成前にできた「原爆被害者連絡協議会」の規約試案とされる55年9月の文書には、当面の活動として「当局に対する被害者の保障の要求」(原文まま)との項目が盛り込まれていた。被爆者運動の草創期を支えた故川手健氏が設立に向けてやりとりした書簡もあり、国への援護の要求などの活動に道筋を付けていく過程が浮かび上がる。

 日米安保条約の改定で揺れた60年、来日を予定していたアイゼンハワー米大統領に宛てた要望書もあった。「原爆慰霊碑の前に原爆投下の罪を詫(わ)び、その償いを約し、且(か)つあやまちを繰返さぬとの誓いを立てる御決意なき限り、訪日を中止されるよう切に要望する」と記していた。

 一連の原本は、現在の広島大原爆放射線医科学研究所が80年代前半に貸与されて目録とコピーを作り、返却。県被団協(坪井直理事長)が2005年に広島市中区大手町へ移転した際、譲り受けたという関係者が一昨年、文書館へ寄贈していた。初期資料を探していた県被団協は、寄贈を巡って文書館と協議していた。

 整理に当たった石田雅春准教授は「被爆者の歩みの重要な証拠書類であり、日本の戦後史を研究する上での一級資料だ」と話している。(長久豪佑)

(2020年8月4日朝刊掲載)

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