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[コロナ禍の8・6] 平和の旋律 高校生担う 式典で被爆ピアノ使い4人演奏・合唱 「日常の尊さ伝えたい」

 8月6日の原爆の日に広島市中区の平和記念公園である平和記念式典で、総勢500人以上による「ひろしま平和の歌」の合唱と吹奏楽演奏が、今年は新型コロナウイルスの影響で中止となる。代わりに少人数の合唱とピアノ伴奏を担うのは、同区の舟入高と基町高の生徒4人。伴奏では初めて被爆ピアノを使う。「広島の若い世代として、世界に平和の歌を届けたい」と練習を重ねている。(寺本菜摘)

 7月下旬、舟入高の音楽室。音楽部に所属する2年の村田菜さん(16)、伊野明華さん(16)、木村優芽さん(17)の3人がマスク姿で歌声を響かせた。「ちゃんと音が合ってたかな」。繰り返し、ソプラノとアルトの旋律を確認する。

 放課後の練習に加え、大役を務めることが決まった6月上旬からは朝練も始めた。村田さんは「自由に歌えない日が続く中、大好きな仲間と歌えることが自分にとっての平和だと気づいた。当たり前の日常の尊さを伝えたい」と語る。

 ピアノを奏でるのは、基町高3年の平賀小雪さん(17)。昨年の中国ユース音楽コンクール・ピアノ部門(中国新聞社など主催)の高校生の部で最優秀賞を受けた。初めて弾く被爆ピアノについて「一音一音がとてもよく響く。合唱と伴奏に込めた私たちの思いを音色に乗せて届けたい」と気を引き締める。

 市は吹奏楽の演奏中止に伴い、ピアノ工房を営む調律師の矢川光則さん(68)に被爆ピアノの貸し出しを依頼。工房から「若い世代に演奏してもらっては」と提案を受け、市立高校の中からコンクールの受賞歴や活動歴を踏まえて4人を選んだ。伴奏には、爆心地から3キロの宇品地区(現南区)の民家で被爆し、22年前に譲り受けたピアノを使う。

 6日の式典は参列者席を例年の1割に減らし、一般の入場も規制する。平和の歌の合唱など当日の様子は、市がホームページでライブ配信する。

(2020年8月4日朝刊掲載)

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