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被爆者の会 2世が継ぐ 尾道 高齢化 「最後の機会」

 被爆者の高齢化で活動が難しくなっている尾道市の「尾道地区原爆被害者の会」の運営を、被爆2世たちが引き継ぐ。被爆体験の伝承活動も模索。6日の慰霊式典に合わせ、2世で集まり活動方針を話し合う。

 同会は合併前の旧尾道市、旧向島町の被爆者で構成。3年前は約200人の会員がいたが、事務局の担当者が病気で活動できなくなり、昨年は亡くなった人の数を把握できなかった。年1回の総会も取りやめており、現在の会員数は定かでなくなっている。

 慰霊式典は毎年8月6日、同市東尾道の原爆死没者慰霊碑前で開催。被爆者の参加は年々減っているが、被爆2世やボランティアの手伝いでなんとか続けてきた。

 会運営の引き継ぎは、「各地で団体が解散している今、継承する最後の機会」と2世の畑山利一さん(70)が呼び掛けた。今月2日には慰霊碑を清掃し、60~70代の2世5人も手伝った。畑山さんたちは今後、2世として初めて被害者の会に加入する見通し。参加の輪を他の2世にも広げ、会員の被爆者の現状も把握する考えでいる。

 畑山さんの父松之助さん(1983年に60歳で死去)は衛生兵として入市被爆。おびただしい遺体が川を流れていく様子などを語っていた。聞いて育った畑山さんは「被爆時の悲惨さや戦後の差別など、本人や2世の経験も記録したい」と思い描く。賛同する2世の石田安利さん(73)も「慰霊碑の存在もあまり知られていない。風化を防ぎたい」と話す。

 同市内では2016年に因島地区の被爆者団体が解散。尾道、御調地区の計2団体が残る。被害者の会の槙原弘会長(88)は「会員は若くても私くらいの年齢で、集うことはもう難しい。核廃絶への思いを託したい」と話している。(田中謙太郎)

(2020年8月5日朝刊掲載)

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