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被爆75年 継承へ使命 広島きょう原爆の日 

感染予防 式典規模を縮小

 被爆地広島は6日、米国による原爆投下から75年となる「原爆の日」を迎えた。広島市は午前8時から、原爆死没者慰霊式・平和祈念式(平和記念式典)を中区の平和記念公園で営む。新型コロナウイルスの感染予防のため参列者を限りつつ、非人道的な兵器による犠牲者を追悼する。被爆者の記憶の継承と平和の実現に向けて、それぞれが行動を誓う日となる。(久保田剛)

 参列者数は例年の1割に満たない805人を予定する。安倍晋三首相や国連軍縮担当上級代表の中満泉事務次長のほか、海外からは83カ国と欧州連合(EU)の代表者が出席する。都道府県の遺族代表は過去最少の23人となる見込みだ。

 開式後、松井一実市長と遺族代表2人が、この1年間に死亡が確認された4943人の名前を書き加えた原爆死没者名簿を、原爆慰霊碑に納める。名簿は2冊増えて119冊、計32万4129人分となった。

 代表者の献花に続き、原爆投下時刻の8時15分、遺族代表の松木俊伸さん(46)=南区、こども代表の畑賀小6年竹宮未菜海さん(11)=安芸区=が突く「平和の鐘」に合わせ、黙とうをささげる。

 松井市長は平和宣言で、核兵器廃絶と平和の実現には、市民の「連帯」が必要と訴える。「75年間は草木も生えぬ」とされた広島の復興は「先人が連帯し苦難に立ち向かった成果」と強調した上で、核兵器廃絶と平和実現に向けた連帯を「市民社会の総意」として築き上げる責務が広島にあると指摘する。

 被爆者の1人の「自国のことばかり考えるから争いになる」との言葉を引用。昨年10月に亡くなった元国連難民高等弁務官の緒方貞子氏と、昨年11月に広島市を訪れたローマ教皇フランシスコの言葉も盛り込む。日本政府には被爆者の思いを誠実に受け止め、核兵器禁止条約に署名・批准するよう明確に要求する。

 「黒い雨」では、国の援護対象となる区域の拡大に向けて「政治判断を改めて強く求める」と主張する。区域外で雨に遭い、健康被害を訴える原告84人全員に被爆者健康手帳の交付を命じた7月29日の広島地裁判決を踏まえた。

 こども代表の矢野南小6年大森駿佑君(12)=安芸区=と安北小6年長倉菜摘さん(12)=安佐南区=が「平和への誓い」を読み上げる。会場のモニターでは、参列を断念した国連のグテレス事務総長たちのメッセージを放映。式典を締めくくる「ひろしま平和の歌」の合唱では、初めて被爆ピアノを伴奏に使う。

(2020年8月6日朝刊掲載)

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